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(1)
下記の別質問でH1N1はH5N1が変異(進化?)してできたものではないと教えていただいたのですが、
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa5334562.html
なぜそのことが分かるのでしょうか。

(2)
H1N1インフルエンザはH1N1豚インフルエンザが変異(進化?)してできたものだと思いますが、そのような理解で正しいでしょうか。
また、もし正しいなら、そのことはなぜ分かるのでしょうか。

よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

>「それらの塩基配列があまりに違いすぎるから」とのことですが、どのくらい違うのでしょうか。



 今、試しに新型インフルエンザのH1N1とタイの鳥インフルエンザのH5N1のHA遺伝子の相同性を調べてみました。
 このHA遺伝子は1700塩基対ほどの長さがあるのですが、その内700塩基対ほどが異なっています。つまり相同性は60%ほどですね。

>また、違いがどのくらい以内であれば「変異した」と考えられるのでしょうか。

 「変異した」ということであれば、たった1塩基違っても「変異した」ということになります。

 ただ、質問者さんの知りたいことはそんなことではないはずですね。

 元の質問は、「新型H1N1の由来がH5N1でないことがなぜ判る?」ということだったはずです。

>つまり、「変異して発生した」と「変異してではなく別系統で発生した」との区別はどのくらいの塩基配列の「違い」を基準として(つまり、境界線として)判断するのでしょうか。

 今回はH1N1とH5N1の関係性を問題にしているわけですが、この2つの株のデータだけでは何も判りません。多くの株を比較することによって、「新型H1N1はH5N1より北米型H1N1に遺伝的に近い」ことが判るわけです。個々の株間の関係性の積み重ねが系統樹になるわけです。
 そしてその系統樹では、H1N1とH5N1は遠い昔に分岐したという解析結果になるわけです。
 どこかに境界線があるわけではないのです。
 個々の関係性の積み重ね(つまり統計的解析)が系統樹になるわけですから、比較する株の種類と数によって結果が違ってきます。

>そのようなソフトウェアは何かの基準に基づいて

 系統樹解析の方法はちゃんとあります。NJ法がメジャーな解析法の1つです。
 一度はちゃんと原理も計算方法も勉強して手計算でも系統樹解析をしてみたことがあるのですが、もう忘れました。
 どのソフトウエアでも、系統樹解析の計算そのものはNJ法や他数種類の手法を用いて行います。なので学会や論文発表の際は、「○○というソフトウエアを用いてNJ法により解析した」などと断りを入れるのが普通です。

 同じNJ法を用いても、ソフトウエアのアルゴリズムによって微妙に違う解析結果になったりすることもありますが、どのみち「数学的な推測」に過ぎないので、その小さな違いは通常問題になりません。


 この一連の質問ですが、既に非常に専門的な領域に入っています。
 「変異」とか「進化」といった基礎用語の理解もままならない状態で、このレベルの説明をするのは非常に難しいです。
 最低限、高校か大学の教養課程レベルの分子生物学をきちんと理解していないと説明すらままならない領域に入っています。変異、進化、連続変異といった"新しい用語"が出現する度に、そのターム関連の質問を立てられている状況なのですが、言葉の意味(定義)をきちんと理解しないまま次の疑問に飛ぶので、非常に足元が危うい理解をされているようです。

 私の回答について「判りやすく」と評価して頂けるのは嬉しいのですが、私の回答内容を理解していれば出てこないはずの質問も出てくるので、やはり私の回答もきちんと理解されているわけではないと思います。
 その状態で次から次へと疑問が膨らむのは判るのですが、もう少し足元を見て1つの回答文をどれだけきちんと理解できるか、に集中した方が良いと思います。この段階で、次の質問の答えはもう出ているのですよ。

 「系統樹解析のソフトウエア」ですが、最近はwebでできます。

http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html

 ここはDDBJという遺伝子解析の総合サイトなのですが、この中のClustalWが系統樹解析です。ここのテキストボックスに塩基配列やアミノ酸配列を放り込んでボタンをクリックすれば、解析結果が出てくるようになっています。
 ここのヘルプ(各パラメータのリンクがヘルプを標示するリンクになっています)ですら、おそらくただの一言も理解できないと思います。
 この質問はそろそろこの領域に踏み込もうとしているわけです。

この回答への補足

御返事が遅くなって申し訳ありません。
詳細な御回答を頂き有り難うございます。たいへんよく分かりました。

少しだけお尋ねしてもいいでしょうか。
H5N1の塩基配列とH1N1のそれとが大きく異なるのは分かりましたが、同じH1N1同士ではどのくらい異なるのでしょうか。
H5N1とH1N1の違いはH1N1同士での違いとの比較において見なければならないのではないかと思いお尋ねしました。

よろしくお願いします。

補足日時:2009/10/23 19:40
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この回答へのお礼

いつもたいへん詳しくかつ的確な御回答を頂き、御礼の申し上げようもありません。
理解もかなり進み毎回御教示いただく内容が少しずつ分かるようになってきたのではと思っております。これも一重にJagar39様のお教えのお陰です。重ねて厚く御礼申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

お礼日時:2009/10/28 14:04

 獣医師でウイルスに専門知識を有します。



 (1)ですが、端的に言えば「それらの塩基配列があまりに違いすぎるから」です。
 H1やH5というのはHA蛋白の型別ですが、これらの型が違うということは、この蛋白をコードしている遺伝子の塩基配列が違うことを意味します。
 新型はH1で従来季節性インフルエンザとして流行しているソ連型も同じH1なのですが、新型とソ連型は同じH1といっても塩基配列は相当異なります(すなわち、抗原性も異なるということ)。
 同じH1亜型の中ですらこれほどまでに異なるのに、H5となればさらに大きく異なるわけです。

 生物の進化は「ごく小さなマイナーチェンジの積み重ね」ですから、突然塩基配列の50%もの領域が変異するような跳躍的な変異は、数学的にも生物学的にもあり得ません。

 遺伝子解析の1つに「系統樹解析」というものがあります。
 これは複数の同じ領域の遺伝子の塩基配列(もしくはアミノ酸配列)を統計的に処理して「どの株から何時頃にどの株が分岐したのか」を調べる手法です。
 一応、無料のサイト及びフリーソフトで系統樹解析はできますし、解析する塩基配列も誰でもデータベースから取って来れますから、素人でも新型インフルエンザウイルスの系統樹解析をすることは可能です。実際にはデータベースの検索タームの設定や系統樹解析のパラメータ設定などで行き詰まるでしょうけど。

 でも、誰がどのようにやっても、新型がH5から分岐した、という系統樹は出てこないでしょう。同じH1のどれか(ちゃんと北米型豚インフルエンザウイルスを解析に入れていればそれから)から分岐した、という系統樹が出てくるはずです。

 (2)についても同様の手法で解析した結果です。
 ちなみに新型は豚インフルエンザだけでも2種類、さらに鳥インフルエンザやヒトインフルエンザの遺伝子の"ハイブリッド"なので、(2)も厳密には正しくありません。

 そこのところを詳しく解説すると、インフルエンザウイルスの遺伝子は1本ではなく、8本あります。これを「分節」と言います。基本的には1本の分節に1つの遺伝子が乗っています。

 インフルエンザウイルスに限らず、ウイルスは全て細胞内に侵入すると殻(カプシド)は用済みなので捨てられて、中の遺伝子が細胞内に放出されます。
 で、その遺伝子から様々な過程を経て細胞がウイルス粒子を生産するわけですが、分節遺伝子を持つウイルスの場合は特殊な事情を考慮しなければなりません。

 つまり、「異なる2種類のウイルスが1つの細胞に同時に感染した場合」に起きる現象が、分節遺伝子を持つウイルスは特殊なのです。

 豚にヒトインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが同時に感染したと仮定します。
 ヒトインフルエンザウイルスは1a,2a,3a,4a,5a,6a,7a,8aの8本の遺伝子を持ち、鳥インフルエンザウイルスは1b,2b,3b,4b,5b,6b,7b,8bの8本の遺伝子を持っています。
 さて、細胞の中でウイルス粒子が組み立てられる際、複写されたそれぞれの遺伝子がカプシド(殻)に収まってウイルス粒子が感染するわけですが、この時「きちんと整理されて遺伝子が収まる」わけではないのです。
 ある粒子は1a,2b,3b,4a,5b,6b,7a,8aの8本が収まり、ある粒子は・・という具合に、早い話256通りの"遺伝子セット"を持ったウイルス粒子ができるわけです。

 要するに、遺伝子(正確には分節)単位で「遺伝子組み換え」をしているということです。

 この現象を「遺伝子再集合(リアソータント)」と言います。
 A型インフルエンザウイルスが「新型インフルエンザによる世界的大流行」を定期的に引き起こして恐れられているのは、この現象があるためです。

 今回の新型も、ある分節は豚インフルエンザ由来、ある分節はヒトインフルエンザ由来、ある分節は鳥インフルエンザ由来、と3種類のインフルエンザウイルスの遺伝子再集合体です。
 というより、最終的には「2種類の豚インフルエンザウイルス」がどうやらメキシコの豚でリアソータントを起こしたらしいのだが、その内の1つの豚インフルエンザウイルスは、もっと以前に鳥とヒト由来のウイルスとリアソータントを起こしていたものらしい、ということのようです。

この回答への補足

いつも御回答いただき有り難うございます。
また、本当に詳しく、私のような素人にも分かりやすくお教えいただき、御礼の申し上げようもありません。

少しだけ追加で質問させていただいてよろしいでしょうか。

>(1)ですが、端的に言えば「それらの塩基配列があまりに違いすぎるから」です。

(3)
「それらの塩基配列があまりに違いすぎるから」とのことですが、どのくらい違うのでしょうか。また、違いがどのくらい以内であれば「変異した」と考えられるのでしょうか。
つまり、「変異して発生した」と「変異してではなく別系統で発生した」との区別はどのくらいの塩基配列の「違い」を基準として(つまり、境界線として)判断するのでしょうか。

(4)
「それらの塩基配列があまりに違いすぎる」とは、次の(a)、(b)のいずれでしょうか。
(a) HAとNA以外の塩基配列は殆ど違わない。
(b)進化関係を考える場合には、HAとNA以外の塩基配列は通常考慮しない。

>でも、誰がどのようにやっても、新型がH5から分岐した、という系統樹は出てこないでしょう。同じH1のどれか(ちゃんと北米型豚インフルエンザウイルスを解析に入れていればそれから)から分岐した、という系統樹が出てくるはずです。

(5)
そのようなソフトウェアは何かの基準に基づいて、この基準に合致すれば同系統、合致しなければ異系統、とするように組まれていると思うのですが、その基準は何でしょうか。
特定のソフトウェアについてそのような基準は当然ですがソフトウェアの作成者しか分からないと思うのですが、一般的にそのようなソフトウェアなら最低限どのソフトウェアでも当然満たしているごく一般的な基準についてお教えいただけないでしょうか。

補足日時:2009/10/16 17:54
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