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 今季、ソ連A型インフルエンザの殆どがタミフル耐性を持った
との事。しかも報道によれば、MRSAの発生経緯の様に人為的な
抗生物質の乱用による多剤耐性獲得では無く、自然変異との事。
 通常インフルエンザですらタミフルをすり抜ける変異をいとも
簡単に果たしてしまう様であれば、「新型インフルエンザにも
タミフルは効くだろう」って、本当なの? 新型インフルエンザ
は生まれつきタミフル耐性を持った種である可能性も有るのでは?
 だとすると、新型インフルエンザ対策は大幅見直し要では
ないのでしょうか?

A 回答 (3件)

 Jagar39です。



>インフルエンザとは自己増殖の為にノイミニダーゼを利用する
>物と決まった物では無いと言う事なのでしょうか?

 いえ、インフルエンザウイルスにはノイラミニダーゼは必須です。ノイラミニダーゼなしに増殖できるような変異を遂げてしまったら、それは間違いなくインフルエンザウイルスとは別種に分類されるでしょう。それどころかオルソミクソ科からも外れてしまうでしょうね。

 タミフル耐性とは、ノイラミニダーゼを利用しなくなったのではなく、ノイラミニダーゼの"形"が少し変わっただけのことなのです。

 ノイラミニダーゼは、"ase"という接尾語から判るとおり、酵素です。細胞内で組み立てられたウイルス粒子が細胞の外に出て行く(出芽)時に必要になる酵素で、これは質問者さんは「ノイラミニダーゼを"利用する"」と書かれましたが、元々インフルエンザウイルスが持っている構造蛋白です。
 タミフルは、そのノイラミニダーゼの作用を阻害する効果を持つ薬剤で、つまり「細胞内で増殖したウイルスが細胞外に出芽することを抑止する」効果を持ちます。既に増殖したウイルスを殺す作用はないので(そんなことインフルエンザに限らず不可能ですが)、発症後一定の時間しか有効ではないわけです。

 で、中学か高校の理科(生物)で習ったと思いますが、"酵素"の定義とは蛋白質でできた触媒ですよね。触媒というのは、自分自身の量は化学反応前と後で変化せずに(すなわち化学反応で消費or生成されない)、化学反応を促進する働きをする物質のことですが、その"働き"は「形」が重要な鍵である、と習った記憶がありませんか?鍵と鍵穴、という例えを記憶されてるでしょうか。

 その「形」とは、例え話ではなしに正真正銘の「形」なんです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%B5%E7%B4%A0
 形が変わってしまうと、基質に結合できなくなり、酵素として働けなくなってしまいます。

 その酵素の形は、タンパク質を構成するアミノ酸の配列によって決まってきます。そしてそのアミノ酸配列は遺伝子によって規定されているというわけです。
 従って、遺伝子に変異が生じてアミノ酸配列が変わってしまうと、酵素の形が変わってしまうため、酵素としての働きが変わってきます。

 タミフルは、このノイラミニダーゼというインフルエンザウイルスが持つ酵素を阻害する薬剤です。どうやって阻害するのかというと、たいていの酵素阻害薬と同様に、ノイラミニダーゼが仕事をする前に、ノイラミニダーゼに結合してしまうわけです。すると酵素は基質と結合できなくなりますから仕事ができなくなるわけです。

 さて、酵素と基質の結合は「形」が鍵だと書きましたが、それは酵素と阻害薬の関係も同じです。
 インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼをコードする遺伝子に変異が生じ、アミノ酸配列が変化してノイラミニダーゼの「形」が変わると、タミフルがノイラミニダーゼに結合できなくなってしまいます。
 これが「タミフル耐性」というわけです。もちろん形が大きく変わりすぎてノイラミニダーゼとしての"仕事"ができなくなってしまえば、耐性以前にウイルス粒子として成立しませんが、「タミフルは結合できず、仕事の効率はさほど変わらない」ような変異をしたウイルスが洗濯されるわけです。

 ちなみに余談ですが、私達人間を始めとする生物の遺伝子も、ほとんどはこの「酵素」をコードしています。
 遺伝子はアミノ酸を指定し、アミノ酸配列がタンパク質の構造を決める、ということも高校あたりの生物で習ったと思います。つまり、遺伝子とは「タンパク質以外の物質を指定することはできない」わけです。
 ではタンパク質以外の骨などの身体の構成要素はどうやって遺伝子が決めるのかというと、例えば骨ならカルシウムを取り込んで・・云々のような「骨を作る化学反応」があるわけですが、それらの化学反応に対応する「酵素」を遺伝子が決めているわけです。まあ身体の構成要素のタンパク質を直接コードしている遺伝子もありますが、基本的にほとんどの遺伝子は酵素を指定していると思って差し支えないです。

 ですから「遺伝子は生物の設計図」という言い方をよくしますが、よく考えるとあまり正しいとはいえない例えだということが判ります。
 「遺伝子は生物を作るためのレシピ」という例えの方がしっくりきますね。

>インフルエンザの定義としては、どこまでの変異が許されるのでしょうか?

 ま、8分節のネガティブセンスの1本鎖RNAを遺伝子に持ち、エンベロープを有し表面に赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ、マトリックス蛋白を持ち、非構造蛋白として核蛋白とRNAポリメラーゼ複合体がゲノムと結合した構造を持つウイルス、ということになるのでしょうか。まだ何か抜けてるかも。あ、C型は6または7分節か。
 実際は、これと同じ構造を持つウイルスでも遺伝子が大きく違ってくれば、同じオルソミクソウイルス科の別のウイルスとして分類されることになると思います。どのくらい"大きく"かは、その時にウイルス学者の間で議論されることになるかと。
 他の生物種でもそうですが、分類に明確な定義なんてありませんから、その時その時の議論の行く末によって決まったり覆されたりします。

>それによっては「ソ連A型の強毒性」という新種」と言う、H5N1でも無い新々型インフルエンザと言う物も出現し得るのでしょうか?

 ソ連A型というのは、亜型でいえばH1N1になるのですが、「新型インフルエンザ」の定義は、抗原性が大きく異なるため人類が免疫を持たず、爆発的流行が避けられない新しいインフルエンザウイルス、ということですから、現在人類の間で流行しているH1及びH3亜型からは、とりあえず「新型」は出ないかと。現在、人類の間で流行しているのはソ連型がH1N1、香港型がH3N2です。

 ま、H3N8なんてウイルスが出てきて猛威をふるえば、これも「新型」ということになるのかもしれませんが。でもH3だと現人類はH3抗原に対する抗体は持っているので、そんなに大パニックになるほどの爆発的流行にはならないかもしれません。

 また、人類のインフルエンザは常に入れ替わっています。
 基本的に「新型インフルエンザ」が登場すれば、それまで人類で流行していたインフルエンザは姿を消す傾向にあります。
 アジア風邪(H2N2)が出現した時、スペイン風邪以来流行していたH1N1は姿を消しましたし、香港風邪(H3N2)と入れ替わりにH2N2も姿を消しました。H1N1は香港風邪と前後して復活しましたが。
 なので姿を消して久しいH2N2がどこかで小規模の流行を維持しながら生き残っていたとして、それが何かの拍子に再び大流行すれば、今の人類のある年齢層以下の人は抗体を持たないわけですから、「新型インフルエンザ」と呼ぶに相応しい流行をするでしょう。

 他にもH9亜型なども鶏に流行を起こしているので危険視されていますし、本質的にはH1~H16、N1~9までの組み合わせで144種類の亜型のどれが「新型」になってもおかしくありません。(ま、現在のH1N1とH3N2は除きますが)
 現在のH5N1は危険視されていて、確かに危険な状況ではあるのですが、それでも「次の新型インフルエンザとなる可能性のひとつ」に過ぎません。

 えっと、「強毒」とか弱毒とか言う話は、また少し別の話になるのですが・・・さすがにちょっと書き疲れたので、もし興味がおありでしたらまたの機会に。
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この回答へのお礼

私も生物学を学んだ身なのですが、免疫学には詳しくないので、少々、歯が立ちませんでした。
でも「H3N8」とかのH1系とかH3系の亜種が出てきても、猛威にはならないだろうと言うのは救いの情報でした。
ところで、「どれかが流行すると、他の系統はナリを潜める」と言うのは興味深い特性ですね。
例えば「無害だが大流行するHx型」とかのインフルエンザを開発できたら、インフルエンザ界でこいつだけが一人勝ちして、結果的に「病禍」の予防になる様に考えますが、間違えてますでしょうか?

お礼日時:2012/10/04 12:03

 獣医師でウイルスに専門知識を有する者です。



 「耐性の獲得メカニズム」は多剤耐性菌でもタミフル耐性インフルエンザでも同じです。
 つまり、耐性の獲得そのものはどちらも突然変異なのでランダム、つまり偶然そのような株が出現するわけです。ですが、その株が優先的に広がっていくことについては、抗生物質やタミフルの多用という「選択圧」がかかっていることを意味しています。

 要するに多剤耐性菌も、それが出現したのは突然変異(単なる偶然)なのですが、その菌が増えたのは抗生物質の多用によって他の耐性を持たない菌が死滅したからです。タミフル耐性インフルエンザの流行とメカニズムの上ではほぼ同じです。ま、ウイルスは純粋に増殖によってでしか「耐性遺伝子」を増やすことはできませんが、細菌はプラスミドによって増殖しなくても耐性遺伝子を他の"個体"に渡せるのが違うだけです。(それでもその増殖そのものはウイルスの方が圧倒的に速い)

 ですから、今年のソ連型がタミフル耐性であるのと、まだ出現してもいない新型インフルエンザがタミフル耐性を獲得するのかどうかは、まったく別の話です。
 細菌ならプラスミドで別系統あるいは別種の細菌にすら耐性遺伝子が「水平遺伝」していく可能性があるのですが、ウイルスは純粋に増殖によってでしか耐性遺伝子を増やせませんから、今のH1N1がどれだけタミフル耐性株が優勢になろうが、あるいはこの世から消失しようが、新型インフルエンザのタミフル耐性能獲得には何の関係もありません。

 仮に季節性インフルエンザに対してタミフルの使用を全て中止したとします。
 すると、今年のソ連型のようにタミフル耐性株が優勢になることは基本的にはなくなるでしょう。少なくとも「タミフル耐性」遺伝子は選択圧を受けませんから。

 でも、それとはまったく別に、新型インフルエンザに対してはタミフルを使わざるを得ませんよね。なんせ今のH5N1は、今のところ致死率は6割を超えていますから。
 とすると、同じようにタミフル耐性株が出現するのは時間の問題になるわけです。現在のH5N1は、既にタミフル耐性株の出現は報告されていますが、H5N1自体がまだヒトからヒトへ感染する能力を持っていないため、それが拡大することもまだないのですが。

 要約すれば、季節性インフルエンザと新型インフルエンザは、「別々に」タミフル耐性遺伝子を獲得するので、今の季節性インフルエンザに対するタミフルの投与を中止しようがどうしようが新型インフルエンザには関係がない、ということです。
 まあ、新型の方が致死率は高いですから、タミフルの投与率も高くなるでしょう。従ってタミフル耐性株が出現するリスクも高くなるでしょう。
 かといって新型にタミフルの使用を控えれば、致死率が高くなるだけです。

 季節性インフルエンザに対するタミフル投与率の高さによって危惧されるのは、新型インフルエンザ発生の際の備蓄分をきちんと確保することができるのか?という点だと思うのですが。現在の投与量を抑えるか、生産量を上げるかしないと足りなくなるのではと思うのですが。

 ちなみに、仮に現在のH5N1から新型インフルエンザが出現すると仮定しても、それがタミフル耐性株であるかどうかは今の時点では判りません。
 現在のH5N1が「新型」になるためには、「ヒト→ヒト感染能」を持たなければなりませんが、それとタミフル耐性遺伝子は別の遺伝子ですから、タミフル耐性株あるいは感受性株のどちらが「ヒト型遺伝子」を獲得するかは、単に確率の問題です。
 現時点ではタミフル感受性株の方が耐性株より数の上では圧倒的に多いわけですから、確率的には「新型はタミフル感受性」で発生する可能性の方がやはり高いです。
 まあ、タミフル耐性株に対しては既に選択圧がかかっていることを考慮に入れれば、その可能性の差も縮まりはするでしょうけど。

この回答への補足

 そもそもインフルエンザの定義とは何なのか分からなくなって
来ました。
 インフルエンザとは自己増殖の為にノイミニダーゼを利用する
物と決まった物では無いと言う事なのでしょうか? 従って、
タミフル耐性を獲得した物もやはりインフルエンザと言う事なの
でしょうか?
 インフルエンザの定義としては、どこまでの変異が許されるの
でしょうか? それによっては「ソ連A型の強毒性」という新種」
と言う、H5N1でも無い新々型インフルエンザと言う物も出現し得る
のでしょうか?
 対策が打てるのか心配になって来ます。

補足日時:2009/01/27 18:03
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この回答へのお礼

「選択圧」と言う単語は初耳だったのですが、進化論の中立論は知っていましたので、大体、察しがつきました。
概して判りやすかったと思います。
尚、「ノイミニダーゼ」が分からなかったのですが、調べるまでも無くNo.3さんが説明してくれていましたので、良く分かりました。
どうも有難う御座いました。

お礼日時:2012/10/04 12:09

もちろん、H5N1でも耐性を生じているので


http://content.nejm.org/cgi/content/full/353/25/ …
新型もタミフル耐性である確率は高いです。

日本で昨年はタミフル耐性のAソ連は数%しか検出されなかったのに今年はほぼ100%タミフル耐性となったのはタミフルの乱用が理由の一つでしょう。抗生物質と同じでいたちごっこです。季節性インフルエンザへの過剰反応が新型インフルエンザの脅威を増しています。
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