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客先(企業)から竣工図をCADデータで納品するよう言われているのですが設計料は頂いております。
この場合CADデータ自体も全て客先に譲渡されたことになるのでしょうか?
こちらとしてはそのデータは次回に他業者との競合で武器となりえるので紙媒体もしくはPDF等の操作できない形で納品したいのですが
客先からは設計料を払っているので当然にデータそのものの権利が移行済み(客先のもの)だと言われています。
この辺の権利関係は法律上どのようになっているのでしょうか?

A 回答 (7件)

著作権は専門ではありませんが、知的財産の観点で回答します。



1.全体の話

設計料をもらって仮にCADデータで納品しても、
CADデータ自体の著作権が全て客先に譲渡されたことにはなりません。
「当然にデータそのものの権利が移行済み(客先のもの)」というのは間違いです。
質問者さんの頭脳労働による創作が含まれている著作物だからです。
著作権をすべて譲渡するという特別な契約があれば別ですが。
(これは図面で納品した場合の図面の著作権についても同じです)

有名写真家に写真を撮ってもらうことを想像してください。
お金を払って撮影をしてもらったしても
よほど真四角のものを真正面から何の工夫もなくそのまま撮ったものでなければ
写真の構図やモデルのポーズ、ライティング等に創作性があります。
写真家も依頼主にデジカメ写真のデータを渡したとしても、
いついかなる媒体(雑誌、テレビ、ホームページ、DVD、ブロマイド等)に好き
なように
載せたり販売してもいいということにはならないでしょう。
写真をとるという契約と著作権に関する契約の両方を交わすものです。

設計のアウトプットとして普通図面だけで通用し、かつ、
不正に複製される可能性が高いのであれば、
できるだけCADデータは渡さない方がいいのでしょうね。

また、上の方もおっしゃっていますが、
「設計者の承諾を得なければ設計図書の変更は出来ないため
改ざんを防ぎ、混乱を防止するため改変ができるCADデータでは渡せない。
PDFか紙でしか渡せない。」
という理由を盾にして突っぱねるのが現実的な解かと思います。

以下はどうしてもCADデータを渡さなければならない前提として
「CADデータ自体の譲渡」とは著作権に関する権利の話だと考え
著作権の話をします。

お金をもらったといっても、設計をしてもらっていることについての設計料であり、
著作権については譲渡契約をしなければ著作権を譲渡したことにはなりません。
ただし、客先が著作権を含み譲渡されたと認識してしまう可能性が高いので、
CADデータを渡す場合には、契約書を結ぶか覚書等を一筆書いてもらうことをお
勧めします。

例:「図面およびCADデータ(それらの一部分を含む)は
目的とする建築物の建築に必要な範囲で、(客先)社内に限り複製を許諾する。
(質問者さん)の書面による事前の許可がない限り、
(客先)および(質問者さん)以外の第三者への開示のための複製は行わないものとし、
また第三者には開示しないものとする。」

著作権の一部(一種)である複製権(コピーする権利)を譲渡するのか、
複製を許諾するのか(複製権はあくまで質問者さんが保有)2通りの選択がありますが、
後者の方が質問者さんにとって有利でしょう。


2.CADデータと著作権

(1)CADデータの著作物性と著作権
設計図は著作物に該当します。建築物に芸術性があるかどうかは無関係です。
CADデータも、細かく見ればパーツと数値の羅列ですが、全体として設計図を
表していて設計図と同視できるので、著作物に該当すると思います。
(構造が非常に単純で誰が書いても同じような図面になるものでなければ、
建築物の図面は著作権法10条1項6号の「学術的な性質を有する図面」に当た
ります。
建築物に芸術性があるかどうかは無関係です。
質問者さんの個性が何らかの形であらわれていれば著作物になります。)
 
著作者は質問者さん自身です。
どのような建物を建てたいかという施主の要望を聞いて、
構造やデザインを創意工夫しながら設計(創作)して
それを創作的に図面に表現したのは質問者さん自身であり
質問者さんの個性が現われているからです。
また、著作者は自身の著作物について著作権を有しています。(18条1項)

お金を払っているから図面等の著作権が注文主のものであるというのは
よくある誤りです。
いくら設計に対する対価を払ってもらっても、著作権を譲渡するという契約がない限り、
著作権は質問者さんのものです。
設計依頼の時点で図面や建築物の著作権の取り決めがなければ
著作権を譲渡していることにはならないでしょう。
(著作権にはさまざまな権利が含まれますが、今回は図面、データ、または建築についての複製権が問題だと思います。)

(2)複製権の範囲
質問者さんはCADデータの著作権を有しているので、勝手に複製されない権利
(複製権)を有しています。建築物に芸術性があるかどうかは無関係です。

有形的に複製する全ての行為が対象となります。例えば
・CADデータをフロッピーやハードディスク(パソコン内蔵のものを含む)や
 USBメモリーにコピーすること。
・CADデータを(図形、数値の羅列を問わず)プリントアウトすること
・図面をゼロックスコピーすること。
・図面をトレーシングペーパーで書き写すこと。
・図面を見ながらフリーハンドで書き写すこと。
・図面をパソコンでスキャンすること。
・図面から線分抽出すること。(数値で再現可能な形で複製していることになる)
・図面をFAX送信すること(紙で出力されるため)

認めた範囲のみに複製を制限すると、これに違反して複製された場合、
著作権侵害の主張が容易です。
(対象物(CADデータ)や複製行為が明確であり、芸術性は不問だからです。)
CADデータや図面の一部を他の図面に流用しても、複製になります。
また、質問者さんの意に反して、他人(客先や第三者)が図面やCADデータを
一部変更、削除、改変することはできません。(同一性保持権。20条)

普通は、図面やCADデータを複製しないと他人に見せたり譲渡したりできないため、
複製の制限を掛けるという手段になるかと思います。

ただし、図面やCADデータに従って建築物を建てることは、
図面やCADデータに現された建築物に芸術性がなければ複製にはならないようです。

結論として、データを勝手に使うなといっても、図面に現された建築が
著作物でなければ(芸術性がなければ)著作権侵害に問うのが難しいため、
複製権で制限をかけるしか手はないようです。

3.建築の著作物

建築についての著作物性は
美的な表現における創作性(芸術性)がないと認められないようです。

したがって、建築に関する図面に従って建築物を完成すること自体や、
既に建っている建築物を真似して(依拠して)建てただけで
著作権に抵触しているというのはハードルが高そうです。

ちなみに、建築の著作物を建築により複製したり、その複製物の譲渡により公衆
に提供する
ことはできませんがそれ以外の利用は全て可能です。(46条柱書、同条2号)
つまり、建築物を写真に撮ったりスケッチしたり、
自分で取った写真や自分で描いた絵を他人に譲ったり複製したり出版したりホー
ムページに載せたり、
外観をビデオ撮影して放送したりホームページに載せたり、
建築物を題材に劇を作ったりすることは
著作権法上は自由ですのでご安心ください。
(個人住宅等のプライバシー等の話は別です。)

著作権法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

参考URL
http://www.jsce.or.jp/committee/cceips/event02/0 …


4.建築物の意匠登録

一品ものの建築物は、市場で取引できません(工業上利用不可。取引性なし)ので
意匠登録の対象にはなりません。出願しても拒絶査定となります。
工業的ではない芸術作品も意匠登録の対象にはなりません。(意匠法3条柱書)

不動産や土地に固定されるものでも、
工業的に反復生産可能な犬小屋や門扉や物置は意匠登録の対象となります。
プレハブ住宅も反復生産可能であれば意匠登録の対象になると思います。

意匠登録は高度な芸術性までは必要とされません。
何らかの美観があればOKです。機能美のようなものでもOKです。
単に雑然としただけであり美観を起こさないものや、寄せ集めでまとまりのない
ようなものは登録されま

せん。
また、公知の意匠や、公知の意匠に基づいて容易に創作できるものは登録されま
せん。
建築の著作物性よりはハードルは低いのではないかと思います。


もし必要であれば日本弁理士会の無料相談というのがあります。(特許相談→
「著作権」の担当のある日)

http://www.jpaa.or.jp/consultation/commission/fr …

以上、長文となりましたが、本日は真面目に回答させていただきました。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。

これほどの詳しい回答をいただけるとは思いもしませんでした。
データ自体の著作権が全て客先に譲渡されたことには
ならないと言うのを聞いて安心しました。
一度に理解できない部分もあるのでじっくり読んで勉強させてもらいます。

しかし現実的には企業とのやり取りの場合は法律云々よりも
データ渡しを拒否してしまうと
いいよ、でも他にいくらでも仕事取りたい業者はいるんだよね…
みたいな直接は言われないかもしれませんが
暗黙の圧力がかかってしまうんですけどね…

お礼日時:2008/11/20 18:30

追記します。


客先(企業)に渡すのは竣工図ですよね。
客先に渡して悪用されないようにするには、PDF化の他にCADデータそのものにそれ以上書き込みできないようにロックをかける方法もあります。
この場合その作成データに「客先提出○○建築工事竣工図」と新たに題名を付けて、元のデータとは別に保存しましょう。
私の場合は、最悪の時に備えてA3縮小でコピーしたのも保存しています。
パソコンに何かが発生したり保存媒体自体からのデータがパーにならないとも限りませんから。
ご参考まで
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この回答へのお礼

ありがとうございます

竣工図と言っても新築物件だけではありません
企業相手の場合は設計した建築物や
改修図のみがデータに残るわけではなく、
実測等で他の施設や設備等の絡みなどの情報がかなり含まれてきます。
特に改修の場合は実測図が次の工事で大きな武器となるので
そう言ったデータツールまで取られたくないのが本音です。
法律上はどうかわかりませんがいくらPDFやロックをしたところで
客先に「ロックかかってないデータでちょうだい」
と言われてしまえば立場上はどうしようもないんですが…

お礼日時:2008/11/22 17:20

#2です。


客先に渡すのは、本来コピーした図面です。
昨今、図面はCADで作成しますが、基は製図板でトレース紙に原図を作成して、その原図で青焼き印刷していたのです。
図面のCADデータは、原図にあたる物です。
したがって安易に原図を出すのは、設計業務に携わる者としては、恥ずべき行為です。
悪用されたら元も子もなくなります。

周辺配置図も設計図書の一部ですので、そのCADデータは原図に当たります。
建築基準法、建築士法、建設業法等をよく読んで下さい。
設計者によって作成された原図は、機密文書に該当し厳重保管管理しなくてはならないものです。
法的保管期間は、15年です。
作成図面の考え方
原図=CADデータ
第二原図=PDF図面
一般図=コピー図
本来原図は、設計料とは別に買って頂く物です。
また安易に原図=CADデータを渡す行為は、設計・工事監理業務委託契約約款に反する行為です。
客先(企業)には、CADデータは原図に当たり設計料とは別に買いとりしていただきます。と言うしかないでしょう。
もう一度、改正建築士法と設計・工事監理業務委託契約約款を最初から読んで理解するようにしましょう。
判断をするのはその後でしましょう。
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なぜなら寸法一本一本測定して図面に起こすのに労苦がかかっても創作性がないからです。


(地図は著作物になりますが地図という程度ではないと思いますので)

だから、残念ながら周辺配置図やそのデータについては
著作権やその他の知的財産権はそもそもない存在しないので、
権利が移行するとかしないとか言う話以前に、客先はデータを自由に使え、誰に渡しても構わないということになろうかと思います。別の業者に渡されても仕方ないと思います。
本件は測量結果の単に納入形態の話となるのではないかと思います。

もちろん、図面やデータで質問者の設計した建物の部分は著作権の対象となります。

権利について参考になれば幸いです。

ビジネスは色々と難しいことが多いと思いますが
幸運を願っています。

質問があれば追加要求してください。
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この回答へのお礼

ありがとうございます

苦労に対しては著作権は発生しないんですね…
CADデータを渡すと言うのは
10月10日お腹痛めた苦労過程よりも
生まれた我が子だけ持って行かれるような気分になりますね。

お礼日時:2008/11/22 17:03

No3です。


補足します。


建物の図面は著作物で著作権が働きますが、
周辺配置図は著作物にはならないと思います。
注意が必要です。
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北国の設計屋さんです。


設計監理業務基準の考え方で答えさせて頂きます。
設計者の作成した設計図書は、原則として設計者しか書き直す事が出来ない決まりになっています。
工事現場等で設計変更が起きた場合、工事監理者は独断では設計図書の変更は出来ません。
全て設計者に問い合わせ承諾を得なければ、設計図書の変更は出来ないのです。
したがって設計図書の著作権は、作成した設計者にある事となります。
ただしその著作権は、建築確認申請の設計者に有るという事になります。
貴方が建築確認申請の設計者なら設計図書の著作権は、貴方に有るます。
これ以外の場合、設計図書の著作権は、元請けの設計事務所又は客先という事となります。
状況を見ながらPDF等の操作できない形又はそのままで客先に納品する必要があると判断します。
ご参考まで
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この回答へのお礼

ありがとうございます

参考になります
詳しい内容はNo.1さんのお礼内容です。
設計した完成品データの著作権を渡したくないと言うよりも
どちらかと言うとそのデータから次の仕事のスタートの武器として
競争相手方に持っていかれてしまうのが悲しいのです。。

お礼日時:2008/11/20 18:20

過去、疑問に思って調べた内容で、正解かどうか?までは、判りませんが・・・参考意見で聞いてください



基本的に、CADデータが、著作権になりうるか?どうか?が先です
ここに関しては、基本的に、CADデータ自体に著作権は発生しません
CADデータを元に作成された建築物自体に、芸術性があるか?ないか?で著作権が発生します
それとは、別に意匠権が発生します
要は、
芸術性ありで、著作権+意匠権
芸術性なしで、意匠権
となりますが、意匠権は、基本的に著作権と違い
特許庁に、意匠権登録をしなくては、権利が発生しません
ここまでが、著作権に関しての話

コンピュータ上の話として、現在、
紙媒体の場合、スキャンして、線分抽出で、DXF化可能
PDF媒体の場合でも、変換ツールを使えば、DXF化可能
と、どういう媒体からでも、大体CADデータを生成することは可能になってます

ですので、権利を守るところになれば、意匠権の話くらいしかありませんが、新規性が無ければ、許可を受けられないそうです

調べた理由は、例えば、国会議事堂、代々木体育館、東京都庁等、TVで放映しますよね
あの特異な建造物の放映するに当たって、放映する時の著作権って、どうなってるの?って調べた時の結果です
結論としては、よく判らんと言うことに達したのですけどね
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この回答へのお礼

ありがとうございます

参考になりました。
データそのものと言うよりも
後々に改修する時などあらかじめデータがあれば
そのデータからスタートできます。
建物だけでなく周辺配置図等次の仕事につながる武器として
保持したいのです。
個人邸などならまだリピートはしれていますが
企業相手の場合はいろんな業者がしのぎを削り参加しますので
現場で測った寸法一本一本の線を自分のものとして
所有しておきたいのですがその作業自体が
対価として支払っているので権利は移行済みと言われるわけです。

お礼日時:2008/11/20 18:15

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