名古屋高裁で、自衛隊の活動の一部を違憲とする判決が下されました。しかし、この憲法判断は傍論であって蛇足だとする人もいます。また、判決が確定したとして違憲判断が国を拘束するかという問題があります。
この点、いわゆる判例として後の裁判所を拘束する範囲と、訴訟当事者を拘束する範囲は、分けて考えるべきではないでしょうか?なぜなら、後の裁判所は、全く別の事件に当該判決の一部を持ち込むことになりますが、訴訟当事者に対する拘束は、あくまでも当該当事者・当該行為限りのものだからです。射程を考える必要がないのです。
今回、名古屋高裁は、請求の是非を判断するに当たって、自衛隊の活動の合憲性を審理・判断しました。結果的には、別の問題点で請求は棄却されましたが、判決を導くに当たって審理が尽くされ、十分に検討した内容です。他の論点で結論が出たというのは、単なる結果論であって、不必要な判断だとの批判は的外れではないでしょうか?また判決が確定した場合には、行政府も、十分に審理を尽くし検討した上での、司法府の最終結論としての違憲判断として、これを尊重すべきではないでしょうか?皆さんの声をお聞かせ下さい。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
「2」の方への補足を読んで気になったのですが…
株主総会決議取消しの訴えや行政処分取消しの訴えはあくまでも形成訴訟です。形成判決は通常第三者効があって当然です(残念ながら行訴法の一部はそうなっていませんが)。棄却判決に第三者効がないことは(これも会社法上例外がありますが)原則通りのことです。いずれにせよ今回の訴訟と同列に話をすることはできないと思います。
それはそれとして、憲法裁判の効力は、「一般的には」主文における合憲・違憲判断の後の裁判や当事者への影響力・拘束力を指します。尊属殺重罰、森林法違憲、郵便法違憲なども個別的効力説によって処理されながら、実際上は法改正を余儀なくされたことは事実です。
質問者様のご興味は、今回のような「下級審」で「判決理由中」の「違憲」判断についても当事者間に効力が及ぶのではないか、という点にある訳ですが、他の方もおっしゃっているように、主文において原告が敗訴したものの、その中で国家行為の憲法違反を指摘した下級審で確定したものとしては、仙台高判の政教分離関係の訴訟があります。あの判決も原告主文敗訴なので、国は上告できず確定しました。果たして、国はかかる判決に従って政教分離について襟元をただしたでしょうか。もとより、国が判決を能動的に「無視」したというのであればそれはそれで問題ですが、国としては、少なくともその「理由中判断」に従って「違憲状態と評されたもの」を改める要なし、と判断した訳です。今回も同様の結果になるのではないでしょうか。
ご回答、ありがとうとざいます。
そうですね、違憲判決の憲法的な拘束力を無視して、国が司法府の判断に逆らうことのないように、国民的な監視が必要ですね。
No.3
- 回答日時:
既判力は当然に影響します。
その実行を担保するものは執行力であります。
しかしながら、判決文の効力は「主文」にのみ存し(民事訴訟法114条)、今回の判決は『請求棄却』でありますので、実行・実現のための強制力は発生しません。
判決理由の効果としては、法理論として裁判所に採用されたことにより、今後同様の裁判において採用される可能性が高いといえるとは思います。
この回答への補足
既判力が判決主文にしか生じないことは分かります。
しかし、憲法訴訟においてはこれとは別に、当事者間に、憲法判断についての拘束力が生じます。その問題を考えているのです。
No.2
- 回答日時:
No.1です。
再び失礼します。「お礼」と「補足」ありがとうございました。>しかしこの裁判官、裁判所から処分を受けたんじゃありませんでしたっけ?ベテラン裁判官の集まる高裁でまで「しゃべり過ぎ」が起きるということは、この本の主張は、残念ながら法曹界では支持されていないんでしょうね…。
・そうみたいですね。やはり司法の裏側の暴露というか権威批判になっちゃったんでしょうね。彼の考えを認めてしまうと、じゃあ今までの判例研究や実務は何だったんだ、ってことになってしまいますもんね。全否定ですもの。当分の間(何十年単位でしょうが)は少なくとも法曹界で受け入れられない、私も思います。でも正論だと思いますよ。私は説得力を感じました。
>既判力や先例としての効力とは別に、憲法的な拘束力も当事者に発生しますよね。私はそれが見落とされているように思えてなりません。
・う~ん、それもこれも主文と理由がつながっているからこその話だと私は思っています。今回の判決は、結果的に主文と理由がねじれているんですよ。もはや「理由」ではないので、本来理由欄に記載されないものなのです。
今回は、被告が国だからこんな風におっしゃっているように思えてなりません。もしも、の話ですが、判決が「原告の請求は認める」「でもイラク派遣は完全に合憲で全く問題ない」という内容で、被告の国が上訴せず確定したら、どう思われますか?原告は「意味不明の不当判決!」と猛反発するでしょうが、逆の立場でも同じことですよ。それでも原告に対し「裁判所が十分に審理を尽くして出した結論であり、憲法的な拘束力も当事者に発生するので原告は受け入れるべきだ」と言えますかね?
この回答への補足
>>憲法的な拘束力も当事者に発生するので原告は受け入れるべきだ」と言えますかね?
合憲判断の効力と、違憲判断の効力は違います。
例えば、会社法でも、あるいは行政事件訴訟法でも、株主総会決議取消の訴え・行政処分取消の訴えにの認容判決には第三者効がありますが、棄却判決には第三者効がありません。棄却判決と認容判決で、効力が違う場合は当然あるのです。同様に考えればよいだけです。
No.1
- 回答日時:
>この点、いわゆる判例として後の裁判所を拘束する範囲と、訴訟当事者を拘束する範囲は、分けて考えるべきではないでしょうか?
・おっしゃるとおりですね。分けて考えてみましょう。
>いわゆる判例として後の裁判所を拘束する範囲
・判例とは、主文を導いた「理由」のことです。主文を導かない話は「理由」ではないので、本来判決文の理由欄に書いてはいけません(氏名欄に氏名以外のことを書いてはいけませんよね。)。ですので、「蛇足」と呼びます。「蛇足」は本来判決文には存在しないものですので、判例にはなり得ません。(ただ、現実には多くの法曹関係者はその区別をしておらず、かなり有名な「判例」も実は「蛇足」だったというのはあります。例:白鳥決定など)
>訴訟当事者を拘束する範囲
・これは簡単。請求棄却ですよね。それ以上でも以下でもありません。
>他の論点で結論が出たというのは、単なる結果論であって、不必要な判断だとの批判は的外れではないでしょうか?
・結果論というか、そもそも憲法判断をすること自体無駄なのです。無駄な作業をしたこと自体を批判されるべきでしょう。結論と無関係の部分を時間を(税金を)掛けて審理することは、受け身である被告にとってはたまりません。今回は被告が国でしたが、被告が個人の場合も同様に考えるべきです。
また、結果的に憲法判断が無駄になったとしたら、その時点で判決理由から除けばよいだけです。もはや不要な検討だったわけですから。
要するに、司法は無駄な行動を取ってはいけないわけです。極めて消極的な、受動的な国家権力であるべきなのです。
つまり、同じ「法解釈」といっても、一般的な解釈と個別具体的な解釈があります。一般的な解釈は行政府が行います(具体的にはその法律を所管する省庁の所管課)、司法は個別具体的な訴訟についてのみ解釈します。
また、司法による法解釈というのは、あくまでも個別具体的な当該訴訟のみに適用されるもので、判例とは今後類似案件がある場合、その参考にされるものにすぎません。判例が法律視されると、あたかも裁判所が立法機関に近くなります。判例に沿って法改正をするのは分かります。法改正はあくまで立法府の権限ですから。
たまに、「こうした事態に対する方法を決めていないのは、立法府の不作為であり、早急な立法が求められる」などは政治的な発言であり、越権行為といえます。
御質問者様は、
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3955900.html
でも同様のご質問をされていますが、ここで「三権分立のよい教材」と私が回答したのはこうした意味です。
特定のイデオロギーをお持ちの少数派の方々は、自分の政治的意見を表明する手段として司法を利用しているのです。でも、裁判所は政治的意見を表明する場ではありません。政治的意見の表明は選挙において行い、多くの国民の支持を得ればよいわけです。司法は関係ありません。
いずれにせよ、ここは意見を表明する場ではありません。「皆さんの声をお聞かせ下さい。」ということであれば、アンケートのカテゴリーでご質問されてはいかがでしょうか?
この回答への補足
既判力や先例としての効力とは別に、憲法的な拘束力も当事者に発生しますよね。私はそれが見落とされているように思えてなりません。
判決は、いくつもの論点を検討して下されます。後から見て、結果的に不要であっても、現に審理・検討した以上判決理由に書くのは当たり前であり、憲法判断についてはその理由における判断も、国に対し拘束力を生じます(確定判決の場合)。後に不要になってからといって判決理由から除去しては、裁判所の判断・審理過程が国民から見えなくなって、非常に問題です。
>>また、司法による法解釈というのは、あくまでも個別具体的な当該訴訟のみに適用
ええ。ですから、訴訟当事者である国に対し、今回問題になった行為についてのみ、違憲判断の拘束力が及ぶものと考えています。
>>「司法のしゃべりすぎ」井上薫著
著書の紹介、ありがとうございます。
しかしこの裁判官、裁判所から処分を受けたんじゃありませんでしたっけ?ベテラン裁判官の集まる高裁でまで「しゃべり過ぎ」が起きるということは、この本の主張は、残念ながら法曹界では支持されていないんでしょうね…。
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