幼児3人が犠牲になった、福岡市元職員による飲酒運転追突事故の判決が出ました。今回、検察側は、危険運転致死傷罪と道交法違反の併合罪ということで法定刑上限の、懲役25年を求刑していましたが、この場合の内訳がよくわかりません。
・この事故は法改正前の06年8月に発生していますが、法改正で危険運転致死罪は懲役15年から20年へ、酒酔い運転は3年から5年へ、救護義務違反は運転者の運転に起因するものであるときは10年に強化されたので、合計すれば35年になるのに、なぜ25年が上限なのでしょう。
・同じく、なぜ今回の判決は業務上過失致死5年+酒気帯び3年+救護義務違反5年で計13年ではなく、7年6ヶ月なのでしょうか。
刑法47条の併合罪(最も重い罪の1.5倍、ただし、それぞれの罪の長期の合計を超えることはできない)を考えれば、5年×1.5倍=7.5年というのはわかりますが、同じ法律の中での罰則は、重い罪が優先されるということでしょうか。
いろいろ調べたのですが、法解釈は全くもって疎いので、ご存知の方、教えてください。
No.6ベストアンサー
- 回答日時:
#3です。
適条に誤りがありましたので訂正させていただきます。求刑の内訳は、
・危険運転致死罪・・・懲役1年~懲役20年(刑法208条の2第1項、12条1項)
・道路交通法違反(救護義務違反)・・・懲役1月~懲役5年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法117条1項、72条1項前段、刑法6条、12条1項)
・道路交通法違反(報告義務違反)・・・懲役1月~懲役3月(道路交通法119条1項10号、72条1項後段、12条1項)
そして、救護義務違反と報告義務違反は刑法54条1項前段、10条のより1罪として扱い(刑は、重い救護義務違反の罪で処断)、以上の危険運転致死罪と救護義務違反については、刑法45条前段の併合罪にあたるので、刑法47条本文、10条、47条ただし書により、懲役は25年が限度となります。
判決の量刑の内訳は、
・業務上過失致死罪・・・懲役1月~懲役5年(平成18年法律第36号による改正前の刑法211条1項、12条1項)
・道路交通法違反(救護義務違反)・・・懲役1月~懲役5年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法72条1項、117条1項、刑法6条、12条1項)
・道路交通法違反(報告義務違反)・・・懲役1月~懲役3月(道路交通法119条1項10号、72条1項後段、12条1項)
・道路交通法違反(酒気帯び運転の禁止)・・・懲役1月~懲役1年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法65条1項、117条の2の2第1号、刑法6条、12条1項)
そして、救護義務違反と報告義務違反は刑法54条1項前段、10条のより1罪として扱い(刑は、重い救護義務違反の罪で処断)、以上の業務上過失致死罪と救護義務違反と酒気帯び運転は、刑法45条前段により併合罪にあたるので、刑法47条本文、10条により、懲役は7年6月が限度となります。
No.5
- 回答日時:
#4です。
一箇所訂正。>後余談ですが、危険運転致死傷罪と酒酔い運転の罪は判例に従えば併合罪になるはずです。これは即ち、酒に酔って「車を運転すること」と酒に酔って「事故を起こすこと」とは別の行為であるということ。言い換えれば、事故を起こすまで行っていた酒酔い運転の事実は事故の中には包摂できないので別の犯罪と考えるのが判例だということ。
この部分は撤回します。
危険運転致死傷罪の法的性質が極めて特殊ながら危険運転行為を基本犯とする結果的加重犯であることを考えると、実際の飲酒運転が危険運転である限りはそれ自体を基本犯と捉えてその加重結果につき成立する犯罪であるから飲酒運転とは法条競合の関係であると考えるべきかもしれません(理論的には包括一罪もあり得る)。
No.4
- 回答日時:
#2#3の回答で適切なので蛇足でしかありません。
併合罪の関係にある犯罪について有期懲役を科す場合の上限の決め方を簡単に言えば次の通り。
1.最も重い罪の上限の1.5倍(47条本文)
2.全ての罪の上限の合計(47条ただし書)
3.30年(14条2項)
1~3の内、「最も軽いもの」。
※なお前提として有期懲役および禁錮の上限は一つの犯罪では20年が最高。
ちなみに「法定刑の上限」という風に報道しているようですが「法律用語としては間違い」です。「法定刑」の上限ではありません。「処断刑」の上限です。
法定刑とは各犯罪について一般的に定めた刑のことです。個別の事件で併合罪加重も含めて刑の加重減軽を行った結果として実際に科すことのできる刑の範囲が定まるのですが、これは処断刑と言います。その処断刑の範囲内で実際に言渡す刑を宣告刑と言いその宣告刑を決めるのが「量刑」。
後余談ですが、危険運転致死傷罪と酒酔い運転の罪は判例に従えば併合罪になるはずです。これは即ち、酒に酔って「車を運転すること」と酒に酔って「事故を起こすこと」とは別の行為であるということ。言い換えれば、事故を起こすまで行っていた酒酔い運転の事実は事故の中には包摂できないので別の犯罪と考えるのが判例だということ。
No.3
- 回答日時:
求刑の内訳は、
・危険運転致死罪・・・懲役1年~懲役20年(平成16年法律第156号による改正前の刑法208条の2第1項、6条、12条1項)
・道路交通法違反(救護義務違反)・・・懲役1月~懲役5年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法72条1項、117条1項、刑法6条、12条1項)
以上は、刑法45条により併合罪にあたるので、刑法47条、14条、47条ただし書により、懲役は25年が限度となります。
判決の量刑の内訳は、
・業務上過失致死罪・・・懲役1月~懲役5年(平成16年法律第36号改正後の刑法211条1項、12条1項)
・道路交通法違反(救護義務違反)・・・懲役1月~懲役5年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法72条1項、117条1項、刑法6条、12条1項)
・道路交通法違反(酒気帯び運転の禁止)・・・懲役1月~懲役1年(平成19年法律第90号による改正前の道路交通法65条1項、117条の2の2第1号、刑法6条、12条1項)
以上は、刑法45条により併合罪にあたるので、刑法47条により、懲役は7年6月が限度となります。
No.2
- 回答日時:
本当は判決文を読まないと正確な検討はできないですが…
まず、求刑についてですが、
これは危険運転致死罪の最高刑である20年と、救護義務違反の5年を取ったものと思います。
救護義務違反について運転者に起因する事故の場合の法定刑引き上げは昨年のことですので、
改正前に起こったこの事故については適用されません。したがって、今回の上限は改正前の5年になります。
(なお、危険運転致死罪の上限は有期懲役刑の上限なので、2004年の改正によって20年になっています)
また、酒酔い運転は危険運転致死傷罪の危険運転と同一の行為ですので、
両者は併合罪(刑法47条)ではなく観念的競合(刑法54条)と思われます。
なので、重いほうの刑=危険運転致死罪の20年に吸収されます。
(もしかしたら吸収一罪かもしれませんが、いずれ結論に違いはありません)
そして、併合罪における有期刑の刑期計算は
・最も重い罪の長期の1.5倍
・すべての併合罪の刑の長期の合計
のうち短いほうと理解いただければ良いかと思います。今回は後者を取って25年となったと思います。
また、判決については、
・酒酔い運転(長期5年)
・救護義務違反(長期5年)
・業務上過失致死(長期5年)
で、どれをとっても5年ですが、併合罪計算の前者のほうが短いので、
こちらを取って5年の1.5倍で7年6月となったと思います。
細かい罪状は違うかもしれませんが(繰り返しますが、判決文を見なければ正確な検討はできません)、
計算の考え方としてはこんなところだと思います。
ご丁寧に教えていただき、本当にありがとうございました。
酒酔い運転は危険運転致死に吸収されるんですね。
法の適用も発生時が改正前なら、改正前のものが適用されることがわかりました。
No.1
- 回答日時:
危険運転致死で20年で47条、14条により上限が30年に増えます。
(最も重い罪の1,5倍、いくつ罪を犯しても上限は変わりません)しかし、47条但書によって、長期の合計を超えられないので、
20+5で25年を超えられません。
道路交通法違反は5年(酒気帯び運転等)が適用されていると思われます。(救護義務違反では起訴されていないはずです。5年の方では、上限が変わらないですし、運転者の運転に起因する10年の方は危険運転致死と二十に死をカウントすることになるので)
質問者のかたがおっしゃるように、今回の判決は業務上過失致死5年の1,5倍が上限ですので7年6ヶ月を超えることにはなりません。
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