プロが教えるわが家の防犯対策術!

鳥インフルエンザについては
・バンデミック前夜であること
・有効なワクチンと治療方法(抗生物質)がないこと
ぐらいは知っています。
ですが、それでどうしてパニックになるほど恐ろしいのかが
いまひとつわかっていません。
基本的に特効薬のないインフルエンザという理解なのですが、
多数の死者が出るのではと恐れられているのはどうしてですか?
なぜ死者が多数出ると思われているのでしょうか?
抗生物質の効かないウイルスは他にも多々あると思うのですが
違いは何でしょうか?

A 回答 (6件)

 ウイルスの病原性とは、すごく大雑把な言い方をすれば「ウイルスが感染した細胞を破壊すること」です。

例えばHIV(エイズウイルス)はTリンパ球という免疫系の司令塔のような役割を果たす細胞に感染してこれを殺すので、免疫機能が正常に働かなくなり、すなわち免疫不全となるわけです。

 で、「細胞への感染」ですが、No.4さんが「ウイルスとは遺伝子を打ち込んでくるミサイルのようなもの」という表現をされてましたが、そのような細胞を破壊しながら侵入するようなものではありません(No.4さんも敢えてそう言う表現を使われたのでしょうが)。
 どんなウイルスも、きちんと細胞の「ドア」を「鍵」で開けて細胞に入ります。これが「感染」です。むろんそのドアはわざわざ細胞がウイルスのために用意したものではなく、その細胞の活動のためのドアなのですが。
 なのでウイルスは「感染できる細胞」が決まっています。

 インフルエンザウイルスの場合は、気道(気管や肺)または腸管の細胞に感染します。
 ただ、インフルエンザウイルスの持つ「鍵」そのものは、宿主動物の多くの臓器が持っているドアを開けることができます。
 それなのになぜ、気道か腸管にしか感染できないのかというと・・・

 インフルエンザウイルスが持つ鍵には「カバー」が被せてあり、そのままでは細胞に感染することができない状態となっています。その「カバー」は、トリプシンという酵素によって外すことができます。このカバーが外れることを「開裂」と言います。
 トリプシンは細菌類が持つ蛋白分解酵素ですので、生体内でトリプシンが存在する場所は「生体内の外界」である気道か腸管、ということになるわけです。

 この開裂によって感染能を得る、というのはインフルエンザに限ったことではなく、コロナウイルスやロタウイルスなど、多くの「呼吸器症または下痢を起こすウイルス」がそうです。

 で、インフルエンザウイルスの場合、新聞などで「H5型」とかいう「HA」抗原で細胞に感染するのですが、このHA蛋白のアミノ酸配列がある特定の形になると、トリプシンがなくても生体内に普通に存在する蛋白分解酵素で開裂ができるようになります。
 すると、このウイルスは気道や腸管だけでなく、全身の臓器に感染することが可能、ということになります。

 この状態を「高病原変異した」と言います。
 つまり「高病原性鳥インフルエンザ」とは、全身感染型に変異したインフルエンザウイルスによって起きる鳥インフルエンザ、ということになります。
 インフルエンザウイルスのHA亜型は1-16の16種類ありますが、「高病原型」に変異するのはH5とH7の2種類だけです。ですので日本では、この2種類のインフルエンザであれば低病原型であっても「高病原型鳥インフルエンザ」として扱うこととしています。

 というわけで、「高病原変異したインフルエンザウイルス」は、風邪のウイルスなどという生易しいモノではなく、全身に感染して多臓器不全を起こす致死ウイルス、ということになります。実際、鳥の高病原性鳥インフルエンザは、致死率が限りなく100%に近いです。

 ヒトの世界ではH1からH3の3種類のA型インフルエンザウイルスが流行しています。むろん全て低病原型です。
 スペイン風邪はH1型、香港風邪がH3型、アジア風邪がH2型だったと記憶しているのですが、つまりこれらもみな「低病原型」だったわけです。それでも「人類に免疫がない新種ウイルスの流行」というだけであそこまでの死者が出たわけです。

 現在、H5型の鳥インフルエンザはヒトの間で流行するには至っていませんが、アジアでは100人以上の方が感染して亡くなっています。
 その記録を読むと「多臓器不全」という単語がしばしば出てきます。鳥に対して高病原型だったウイルスはヒトに対しても高病原型だったのでしょうか。
 まあこの病原性のままヒトの間に大流行を起こすとは考えにくいのですが、今「パンデミックが起きたら」という人的被害予測の最悪の数字は、どうやらこの病原性のままで大流行を起こしたら、という予測のようです。
 ま、今のアジアの人的被害の統計が、分母(感染者数)をどれだけ正確に捉えられているか判らないのですが、統計の数字の上では致死率は50%近いですから、このままヒトの間で流行を起こすような変異を起こすと、「空気感染するエボラウイルス」みたいな怖さですよね。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

非常に難しい内容を我々一般人にもとてもよくわかる丁寧なご説明
本当にありがとうございました。
よくわかりました。

人類の歴史は、そのウイルスで犠牲になられた方の上に成り立っているとも
言えそうな気がします。
ですがその一方で、どんなウイルスが爆発的に感染しても結局生き残る
人がいて、生き残れる術を生み出せる(これまでのところは・・・)そこに
また人間のすごさも感じます。
SARSの時もそうでしたが、同じ環境にいても必ず対抗できる人がいる。
人間、生命は不思議だと思います。
とにかく、爆発的な人への感染が始まる前に対抗策ができるよう祈りたいです

お礼日時:2007/01/13 19:28

 「パンデミック」について説明します。



 前提となる「基礎知識」として、全てのウイルスは遺伝子の発現に必要な細胞内小器官を持たないため、単独では増殖できず、生きた細胞内に侵入して宿主細胞に自己を複製させなければ増殖できない、ということを知っておいてください。
 余談ですが、そのため全ての抗生物質は全てのウイルスに対してまったく効果を持ちません。抗生物質でウイルスを殺そうとするのは、ガソリンを入れて三輪車を走らせようとするのと同じくらい意味がないことです。

 さて、インフルエンザウイルスの特徴として、遺伝子であるRNAが1本ではなく8本ある、ということがあります。8分節RNA、という言い方をします。
 インフルエンザウイルスが細胞に感染すると、細胞内で8本のRNAが放出され、それらがそれぞれ細胞内小器官によって複写、翻訳されて新しいウイルス粒子ができます。

 このとき、もし「1つの細胞に2種類のインフルエンザウイルスが感染していた場合」、新しくできるウイルス粒子の中に収まる8本のRNAは、元のウイルスと同じ組み合わせとは限らない、ということになります。

 すなわち、この時は感染した動物の体内で「インフルエンザウイルスの遺伝子組み換え」が起きているわけです。
 この現象を「遺伝子再集合(リアソータント)」と言います。

 インフルエンザウイルスにはこの現象があるので、ただでさえ変異が激しいウイルスなのに、さらに組み替えによって全く新しいウイルスが突然出現してしまう確率が高くなってしまいます。

 通常、鳥やヒト、また豚や馬で流行するインフルエンザウイルスは抗原性がことなるため、鳥のウイルスがヒトに感染する、ということは起きませんし、今アジアで起きているようにヒトに感染しても「ヒトからヒトへ」容易に感染が拡大するような感染力は持ちません。
 しかし鳥インフルエンザが蔓延して、同一個体にヒト由来と鳥由来のインフルエンザウイルスが同時に感染するような事態が起きると、そこから「新種のインフルエンザウイルス」が出現する危険性が高くなります。
 そうなると、その新種のウイルスに対してはヒトは免疫を持ちませんから、感染力と病原性が共に非常に強く猛威をふるうような恐れがあります。

 パンデミックとは「感染爆発」と訳されることが多いですが、これはこのような過程を通して起きるわけです。
 人類は過去3回のインフルエンザパンデミックを経験していると言われています。1回目がスペイン風邪、2回目が香港風邪、3回目がアジア風邪ですが、いずれも全世界で多数の死者を出ています。

 分節遺伝子を持つウイルスは他にも数種類あり、例えばロタウイルスは10分節のRNAを遺伝子に持ちます。なのでこのウイルスも容易にリアソータントを起こします。
 また、もう忘れられようとしていますがSARSで知られた属するコロナウイルスは、分節遺伝子ではなく1本鎖RNAを遺伝子に持つウイルスなのですが、遺伝子複製の機序が少々複雑なため、「遺伝子単位のリアソータント」が起きます。

 というわけで、「生体内遺伝子組み換え」によって変異できるウイルスは何種類かあるのですが、渡り鳥という全世界レベルで広域的に移動する動物を自然宿主に持つインフルエンザウイルスが、組み替えによる変異の結果、人類に感染爆発すなわちパンデミックを起こす危険性が高いウイルス、ということになるわけです。
    • good
    • 0

ウイルスが致死ウイルスとなる原因はさまざまです。


ウイルスとは遺伝子を打ち込んでくるミサイルのようなもので、
感染すると、人間の細胞などに入り込み、異常な蛋白を作ったり、
生体機構をぶっ壊したりします。
もちろん他の細菌に対する防御機構を壊すこともあり、敵が何倍にもなって攻めてこられるような状態になり、呼吸不全や、多臓器不全で死亡したりします。体中から出血して死ぬような恐ろしいウイルスもいます。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ありがとうございます。

なるほど、ウイルスの侵入での危険がイメージできました。

お礼日時:2007/01/13 19:22

過去に鳥インフルエンザが変異し人に感染して、多数の死者が出た事があるからではないでしょうか。


一番有名なのが「スペインかぜ」ですかね。全世界で4000万人以上の死者が出ています。

今話題になってる鳥インフルエンザは、スペインかぜの元になった鳥インフルエンザよりも毒性が高いと言われてます。
これが人に感染し、人から人へ感染するように変異したら、やはり驚異と呼ばざるを得ないと思います。

オーストラリアの研究所によれば、新型のインフルエンザが出現した場合、全世界で数千万人~数億人の死者が出るとの結果も出てます
経済損失は日本だけでも20兆ほどだそうです。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ありがとうございます。

4000万人以上ですか。確かにこれからだとその数倍はリスクありますね。
真剣に考えるほどに恐ろしいですが、対症薬はどういう状況
なんでしょう・・・タミフルも効くかどうかいまひとつ明確では
ないようですし、全世界で研究されているのでしょうから、それに
期待するしかありませんね

お礼日時:2007/01/12 23:58

スペイン風邪と発生状況がほぼ同じで


原因のウイルスも同じ発生状況から、スペイン風邪の再来というより
交通手段の発達により当時より広範囲に、さらに伝染速度が格段に早く、影響が出ると予想される為。
また高病原性としてかなり毒性が強いので致死率が高い。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A% …
スペイン風邪と同じ感染率50%だと、現在の人口の半分だと約32億人近くになり
致死率10%とすると3.2億人が死ぬ事になり大変な量です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E3%82%A4% …
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ありがとうございます。
毒性が強い・・・ということはやはりそのウイルスそのものが
人を死に至らしめるということなんですね。

真剣に考えるほどに恐ろしいですが、対症薬はどういう状況
なんでしょう・・・タミフルも効くかどうかいまひとつ明確では
ないようですし、全世界で研究されているのでしょうから、それに
期待するしかありませんね

お礼日時:2007/01/12 23:56

インフルエンザそのものが致死的な感冒だからです。


通常ウイルスはその遺伝子により、DNAウイルスとRNAウイルスにわけられます。前者ヘルペス、アデノ(はやり眼など)などで、インフルエンザやエイズは後者になります。DNAウイルスの場合、遺伝子が仮に変異したとしても、DNAの場合は遺伝子修復酵素というものがあり、基本的に変異は防がれます。しかし、RNAの変異を修復する酵素は存在せず、変異したままになります。現在存在するワクチンが有効なものが蔓延してもワクチンさえ打っていれば重症化しませんが、鳥インフルエンザのようにワクチンで対応できない新種株が蔓延すれば、感染した人はひとたまりも無くやられてしまいます。
飛沫感染する致死ウイルスです。恐ろしさがわかって頂けましたでしょうか?
    • good
    • 0
この回答へのお礼

早々にありがとうございます。

ご回答は理解できました。
それでは、今の鳥ではないインフルエンザも、ワクチンや抗生物質が
なければ致死ウイルスということなんですね。
追加で教えていただきたいのですが、致死ウイルスというのは、仮に
(鳥)インフルエンザで死亡するということがあれば、そのウイルス
そのものが人を死に至らしめるということなのですか?
それとも何か他の病気を誘発するのでしょうか?
素人質問ですみません・・・

お礼日時:2007/01/12 23:51

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!