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 最近右脳と左脳の違いついての文献を読んで気になったことがあります。

 その文献では左脳は論理脳、左脳が感覚脳という風に分けており、
左脳では論理的に今までの経験を同じ性質のものに集合化して、
分類することで言語化を行ってきたと説明されていました。
それに対して右脳は論理的でないとされ左脳のような論理的な
集合化は行われてないとされていました。

 しかし、私の素人考えですが、論理的でないにしろ何かしらの
集合化が行われていない限り、外界からの情報に直感的な反応をすることが
出来ないのではないでしょうか?
特に右脳に依存すると言われる感情の起伏や芸術への理解などに関しては
どのようなメカニズムによるものなのでしょうか?

 漠然とした質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

こんにちは。


「左右半球の機能分化」に関し、我々人間の脳で現在までに確認されておりますのは、「言語中枢が大脳半球の左右どちらにあるか」だけであり、それ以外の解剖学的な違いはひとつも発見されていません。「言語中枢」は90%以上のひとで左脳にありますが、右脳にあるひともいるわけですし、ごく少数ですが左右両方にあるひともいます。
このため、例えば外科手術など、何らかの理由で機能分類が必要な場合は、取り敢えず言語中枢のある方を便宜上「優位脳」、反対側を「劣位脳」としますが、必ずしも「左脳=優位脳」ではありませんし、「優位」という言い方はしますが、どちらかがどちらかを支配しているということでは決してありません。

>その文献では左脳は論理脳、左脳が感覚脳という風に分けており

さて、私はこれまで「右脳・左脳」というものをきちんと調べたことがなかったのですが、このご質問を拝見して質問者さんと全く同じ疑問を持ちました。そこで、ちょっと調べてみたのですが、どうやら現時点では「左脳・論理脳/右脳・感覚脳」と断言できる根拠は何処にもない、ということで決着が付いてしまいました。
哺乳類や鳥類では、我々人間を始め多くの陸上動物がその進化の過程で「脳半球の機能分化」を進行させたというのは概ね事実だと思います。ところが、最初に申し上げました通り、左右両脳の解剖学的な違いといいますのは、ヒトの大脳皮質で言語中枢が左右どちらにあるか以外はまだ何も発見されていません。このため、右脳と左脳の機能の違いというものを無理やり説明しようとしますならば、

>左脳では論理的に今までの経験を同じ性質のものに集合化して、分類することで言語化を行ってきた

と、結局どうしてもこうゆうことになってしまいます。
これは、「左脳(優位脳)」では「言語認知」や「言語運動」を司り、知覚情報や感覚記憶に対する「言語概念による分類・対象化」といった一連の作業を行うのに対して、言語中枢のない「右脳(劣位脳)」ではそれが行われないということであります。そして、左脳はこのような余分な仕事を受け持っているわけですから、少なくとも右脳と同じ分量の仕事は物理的にできない、ということになります。
現在のところ、解釈可能なのはここまでです。では、果たしてこれが「左脳・論理脳/右脳・感覚脳」であることの根拠になるでしょうか。どう考えてもそうはなりませんね。

例えば「利き手・利き足」などの運動機能や、「利き目」などといった感覚機能でも、その働きは100%左右対称ではありません。ですが、言語中枢は90%のひとで左脳にあります。ならば人類の右利きはそのせいかと言いますならばそうでもなく、左利きのひとの言語中枢も半数が左脳にあります。
ですから、「利き手」といいますのは脳半球の機能分化というものを誠に顕著に示す事例ではありますが、残念ながら言語中枢との関係というのは未だ全く解明されていません。まして何よりも、言語中枢というものを持たない他の動物にもちゃんと「利き足」というものがあります。では、どうして動物の脳は左右の働きが違うのかということになりますと、その物証と言えるものは人間の言語中枢以外には何も見付かっていないというわけです。
従いまして、ご質問の内容を拝見する限り、その本に書かれた説明で納得しろというのがどだい無理な話なんです。ですから、質問者さんは疑問に思われました。私も、あれ? と思いました。

>論理的でないにしろ何かしらの集合化が行われていない限り、外界からの情報に直感的な反応をすることが出来ないのではないでしょうか?

そうですよね。
全く以って質問者さんの仰る通りであります。これでは辻褄がぜんぜん合いませんよね。
「集合化」という言葉の意図はちょっとわかりませんが、ANo.1さんがきちんとご説明して下さいました通り、知覚情報といいますのは、各「感覚連合野」での認知処理が成される限り必ず対象化され、それはちゃんと「分類・記憶の可能な状態」になっているということです。ですから、その本にはどうしてそんな紛らわしい書き方がされていたのかが分かりません。
では、絵画や彫刻などの芸術を鑑賞するための「視覚情報」というのはいったいどのように処理されるのかと申しますと、大脳皮質における感覚情報の受け入れには視覚、聴覚etc.に対して専用の窓口があり、視覚の場合は「視覚野」がそれに当たります。次に、その先は同じ視覚情報でも認知作業を受け持つ連合野が分かれており、「色彩」や「形状」といったものは「側頭葉連合野」、「位置関係」や「距離」などといった空間情報は「頭頂葉連合野」に送られて認知されます。認知作業を行う場所が違うということは、その情報が記憶されたり再生されたりする場所が違うということです。ですが、ご心配には及びません。これらは、それぞれの認知処理過程で「同じ時間」に「同じ対象物」から得られた情報としてきちんと「分類・処理」されており、尚且つ、過去の体験とも比較され「以前に見たのと同じ物」あるいは「初めて見るもの」といった判断もしっかりと下されています。

知覚情報が連合野で認知されるというのはこのようなことでありまして、もちろん、ここでは言語処理というものは成されていませんが、では果たして、それぞれの感覚連合野で整然と行われるこれが、「論理的な分類処理ではない」とどうして言えるでしょうか。更に、我々の身体・左右感覚器官からの感覚情報は大脳皮質・左右感覚野に同時入力され、認知処理、記憶処理は左右両脳の連合野で同時に進行するわけです。従いまして、少なくともここには「右脳には論理的な処理ができない」とか、曲がりなりにも「芸術を鑑賞するのは右脳の仕事である」などとする根拠は一切見当たらないわけです。
では、右脳では知覚処理よりももっと高次な「思考の領域」に我々人間の高尚な芸術観を獲得したり、感性的な処理を専門に行う「右脳機能」というものがあるのかといえば、そのような中枢は、まだひとつも見付かっていないということだそうです。同様に、「論理的な処理」を行うとされる左脳で発見されているのは「人間の言語中枢」だけであり、芸術の価値や美しさを判断するための知覚情報は、右脳と同様に、左脳でもきちんと処理されています。

このように、我々高等動物の脳は、その効率を高めるために明らかに機能分化した形跡があります。ですが、だからといってそれを「左脳・論理脳/右脳・感覚脳」などと分類できる根拠は何処にもありません。現時点で予測できるのは、左脳と右脳ではそれぞれの情報処理量の配分が物理的に異なるということだけですが、それもやはり、言語中枢を持つ我々人間の脳にしか当てはまりません。
従いまして、質問者さんのお読みになった本は実際にどうなのかは分かりませんが、少なくとも「右脳を鍛えて感性を養おう」とか、「左脳を活性化させて目標達成能力を高めよう」などといった巷の自己開発セミナーや社内研修などは、ほとんどみな何の根拠もないデタラメということになります。
ということでありまして、私は今回の調べ物で納得できたのですが、質問者さんの疑問も、この辺りで解いて頂けますでしょうか。
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この回答へのお礼

素人のとんちんかんな質問にご丁寧にお答え下さり、ありがとうございました。
とても分かりやすく説明して頂き、とても参考になりました。

これからもう一度じっくりと読み返してしっかりと理解したいと思います。
本当にどうもありがとうございました。

お礼日時:2007/01/13 01:29

表情をポジティヴかネガティヴか分けて認知するだけでも、じゅうぶん集合化だと思うのですが……その本のことがよくわからないので、何ともいえません。



また、感情処理が右脳に特化している(側性化)というのも、1つの説にすぎません。「感情コミュニケーション仮説」と呼ばれるもので、表情認知が右脳のほうが速いことなどが根拠になっています。これは、感情体験ではなく感情の理解や表出にかかわる仮説です。

これとは別に「ヴェイレンス(感情価)仮説」というものがあります。これは上の仮説とはちがい、感情体験、その個人差にかかわるものです。右脳の前頭葉の活性化とネガティヴ感情の体験とが関係し、左脳の前頭葉の活性化とポジティヴ感情とが関連していることを示した実験があります。

一方、感情の側性化を支持しない研究者もいます。また、具体的な神経メカニズムもあまりわかっていません。さらに、感情処理が側性化する進化的な適応的意義も不明です。

参考にしたのはこの本です。
村山 航 (2006). 感情と脳 北村英哉・木村晴 (編) 感情研究の新展開 ナカニシヤ出版 pp. 67-92.
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4779501105/

上の本でも紹介されていましたが、ここ40年ほどにおこなわれてきた感情処理の側性化にかんする研究の総説がこれです。
Demaree, H. A., Everhart, D. E., Youngstrom, E. A., & Harrison, D. W. (2005). Brain lateralization of emotional processing: Historical roots and a future incorporating "Dominance." Brain and Cognitive Neuroscience Reviews, 4, 3-20.
http://dx.doi.org/10.1177/1534582305276837
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この回答へのお礼

あまり上手く説明できずすみません。
脳のメカニズムはまだまだ未知な部分が大きいのですね。
ご丁寧にありがとうございました。

お礼日時:2007/01/13 01:27

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