No.2ベストアンサー
- 回答日時:
別に「乳母」の歴史などを調べている訳でないので不確実ですが、平安貴族の乳母の場合、三つか四つか、或いはそれ以上の意味があったはずです。また、それ以前以降にも、似たような意味や機能があったはずです。
基本的に、高貴な女性は乳母を付けるのが慣習であったこと。
慣習はそれとして、実際的にはどういう利点があったのか。
1)高級貴族の夫人などの子どもは、後継者男子としても、勢力構築のための兄弟としても、また婚姻関係を通じての勢力拡張のための、他家との婚姻のための娘としても、何にしても、無事に、丈夫に育ってくれることが必要であったこと。これは、別に、子どもを何かに利用しようと思わなくとも、幼児死亡率が高かった昔は、大事に育ってくれることを願ったことがあるでしょう。
すると、初産の女性だと、どうしても育児知識がなく、どうやれば、丈夫に安全に子どもを育たてられるか、経験も知識もなかったことがあります。そこで、乳母に任せると、乳母として、初妊娠の女性を乳母には普通しないので、経験や知識があり、実際に子を育てた実績もあるので、子どもの育成に信頼ができ、必要であったこと。(無論、子どもの育て方には、もっと経験ある人も付いており、乳母以外にも、つききりの医師や、育児担当の女性もいたでしょうし、乳母も一人ではなかったはずです。
また、最初の子どもをそうやって育てると、以降も、乳母に頼まないと、直接の経験が母親は希薄なので、乳母を必要としたということになります。
2)育児のような仕事は、身分の高い女性には、いささか相応しくないと考えられていたことがあります。また、強い母親もいますが、神経症になる母親もおり、高級貴族の娘出身の女性は、身分の低い女性に較べると、神経質で、また、個人的に、また公的立場から、育児が面倒だか、育児にあまり時間を割くことができないという女性もおり、乳母は好都合であったと言えます。
3)乳母には当然子どもがいる訳で、乳母が付いた子どもは、乳兄弟または乳姉妹を持つことになります。成長するときは、乳兄弟などと一緒に成長する訳で、子どもの頃から一緒に育った乳兄弟などは、長じると、腹心の部下などになり、信頼の置ける家来などになったこと。これは女の子の場合も同様で、乳兄弟や乳姉妹は、格別な信頼があり、権力闘争などのなかでは、信頼できる者というと、兄弟姉妹も疑わしいとなると、乳兄弟ぐらいが、一緒に育って、庇護を受ける家来のようなもので、信頼ができたということになります。
同格の兄弟姉妹以外に、兄弟姉妹と同様だが、身分的に家来になる乳兄弟などは、生涯にわたって、忠実な部下である可能性が高かったことがあるのです。
4)また、乳母を出す家は、普通、高級貴族の家来筋に当たる家の娘で、主家と家来の家のあいだで、乳母を介して、より強い絆ができたこと。政略結婚は、同格かそれに近い家同士で同盟関係を結ぶためのものですが、乳母を通じて、家来の家との結束が硬くなり、家来の家でも、乳母を通じて、主家と特別な関係になり有利であること。
5)最初の育児の仕方と関連あるのですが、身分の高い女性が、賢明な女性かというと、必ずしもそうでなく、馬鹿な女性も居たわけで、そのためにも実績を持つ乳母が必要だった訳で、更に、教養などの点でも、乳母は選択できるので、教養ある乳母を付けると、母親が育てるよりも、子どもが幼い頃から教養が身に付くというのがあります。
6)これは、どれぐらい効果があったか知りませんが、育児しないことで、女性としての美容が維持できた可能性があります。育児をすると、自分の美容のことを気にしていては、なかなかできない訳で、育児は乳母に任せ、母親は、美容に専念し、色々な意味で、美しい姿とかを、妊娠前の段階まで回復する必要があったし、育児で、容色が衰えるのは、困ったことだったというのがあると思います。
大体、平安上級貴族が、子どもに乳母を付けたのは以上のような理由だと思います。このなかの幾つかは、古代の身分の高い女性にも当てはまり、そういう女性には、子どもに乳母がいたでしょう。
また、平安時代の最高級貴族でなくとも、貴族なら、また、権力や冨を持つ者は、上の六個の理由が或る程度妥当し、それなりに雇うことのできる乳母を子どもに付けたと言えます。
鎌倉時代や室町時代には、武家は尚武を尊ぶということから、武家の母親は強くなければならないと言うことで、母親も育児に携わったでしょうが、乳母はやはり、同じような理由から付けるのが合理的だったはずです。特に武家は、乳兄弟などは、信頼できる武士の家来となるので、大事だったでしょう。主家と家来の家の結びつきも重視されたでしょう。当然、乳母は、或る程度以上の身分の家だと、子どもに付けることになります。
江戸時代の武士も同じことが言えます。千石、二千石の旗本だと、乳母を付けたことがあるでしょうし、大名や、大身旗本になると、子どもには乳母がいるのが普通でしょう。
なお、子どもは、高級貴族や高級武士だと、側室の子どももおり、これらは認知されていると、正夫人(正室)の子どもということになります。側室が乳母と共に、子どもを育てるというのがありますが、子どもの身分を挙げるため、正夫人が育てるという形にする場合があります。この時、乳母がいないと育てようがないのです。
明治・大正でも、華族の当主は昔の殿様ですから、また幼児死亡率はなお高かったので、乳母を子どもに付けていたでしょうし、財力のある者も、似たことをしていたことがいえます。しかし、乳兄弟を家来にするとか、主家と家来の家の結びつきなどは、希薄になって来たはずです。
昭和以降だと、乳がでないとか、何かの理由で母親が育児できず、養子養女にも出せない場合、財力のある者は、乳母を雇ったでしょう。ただ、「乳母」という呼び方が何時まで続いたかは分かりません。
現皇太子に乳母がいなかったと言っても、育児に協力する女官はいた訳で、専門の医師も付いており、授乳は現皇后がすべて行ったとしても、皇太子妃として公的に忙しい立場の方だったので、実質的に育児を担当した、昔の「乳母」に相当する人はいたはずです。
昔の乳母がいる場合でも、母親が授乳することや、子どもの面倒を見ることはあったでしょう。普通の母親だと、母乳を何とかしないと駄目ですから、毎日絞って棄てるとかするか、または、棄てるよりも、子どもに授乳した方がよいというので、授乳していた可能性が高いです。
No.3
- 回答日時:
大正末年生まれの祖母は、素封家の生まれで、乳母がついていました。
5人兄妹ですが、男女別に乳母がいたようです。同じような立場の人何人かに聞いてみましたが、いた人といなかった人が混在しています。専任の乳母はこのころまでかと思います。
昭和に入ると同じような立場でも「おんばさん(乳母)」ではなく、「おなごっさん(女衆さん、女中)」が相手をしてくれた、という証言が増えます。
子ども専任というわけではなく、他の仕事もし、子どもの面倒も見、という感じです。
「おんばひがさ(お乳母日傘)」という言葉があります。「ぼっちゃん育ち」という意味です。ことわざ辞典にも載っているのを見たことがありますので、江戸時代の富裕な家では乳母を雇うのが一般的であったと思われます。
現代においては「お手伝いさん」「ベビーシッター」と呼称は変わってますが、乳母的な役割を果たす人はやはり存在すると思います。
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