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古典ギリシア語には、なぜ無気息記号があるのでしょうか。

A 回答 (1件)

なぜ?と問われると難しいのですが、おそらく「あったほうが便利」だったから定着したのでしょう。



古典期にはほとんどの地方で"Η"という文字は「エー」ではなく h音(気息音)を表していました。Ηを長いeに当てるのはイオニアでの習慣です。例えばアッティカの碑文では定冠詞の男性単数主格(ho)は ΗΟ と表記しました。その後(紀元前300年ごろ)、Ηをeの長母音の表記に使うようになると、まず Ηの左半分(トの横棒を水平にしたような形の文字)を気息音を表すために用いるようになり、次にΗの残り右半分の形を語頭に気息音が無いことを表すためにつかうようになりました。今の古典ギリシャ語の教科書にあるような形での単語ごとの分かち書きはされていませんでしたから、おそらく気息記号・無気息記号ともに、単語の頭を示す機能も担っていたはずです。

紀元前300年ごろというこの時期はちょうど古典期とコイネーギリシャ語(ヘレニズム期ギリシャ語)の境目に当たります。ギリシャ語がアレクサンダー大王の支配域の共通語として広い地域で使用されるようになり、必要に迫られてギリシャ語が母語ではない人々がギリシャ語を学び使用するようになった時期と重なります。気息音が「ないこと」を表す記号を付けるのは合理的ではないかもしれません。けれども使用者数が増えた時代の表記法は後世への影響も大きかったのだろうと思います。

ギリシャ語では紀元前2世紀ごろから気息音の消失が起こりました(一部の方言ではもっと早い)。この変化は数百年かけてゆっくり進行しました。昔の文書には(ト記号で)書かれているのに「今」は発音しないh音に気付く人もいたでしょうし、アテーナイでは発音しないのに別の方言話者は発音しているといった状況が想像できます。こうしたことも気息/無気息の書き分けに関心を向かわせる方向に働いたと思います。
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この回答へのお礼

ありがとうございました。

お礼日時:2006/09/15 17:16

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