この場をかりて毎度お世話になってますm(__)m
カントの「要請」について聞きたいことがあります。
カントは自由・不死・神の要請について述べていますが、これらの要請の理論を述べたきっかけは何なのでしょうか?
あと、少し「要請」からはずれますが…
「純粋理性批判」の二律背反についてなのですが、これにおいてカントは合理論批判をしようとしたのですよね?!(正確にいうと合理論的宇宙論批判)
そういうことになると、合理論はもともとどういう考えをしていたのでしょうか?
二律背反で言っていること(定立と反定立)自体はそこそこわかるのですが、どこが合理論批判なのかよくわかりませんでした(^^;)
わかる方お願いいたします・
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
えっとですねぇ。
すんごい悩んでます。
ここまで細かいことは絶対に必要ない。
かえって質問者さんを混乱させるだけになるかもしれない。
それでも…それでも、気になるんです。
だから、二種類、回答を書きますね。
簡単な方と細かい方。
細かい方は、気が向いたら読んでください。
で、もし大学に行って、哲学科に進むようなことがあったら、もう一度読み返してみてください(誤りを見つけられたりして^^;)。
---(簡単な回答)
意志の自由、霊魂の不死、神の存在は、論理的に証明することはできないけれど、「実践理性」の「要請」として認められます。
ここでの「要請」は、あくまで「公準」(公理に準ずるもの)という意味です。
---(ほとんど無意味に細かい回答)
「自由」は「霊魂の不死・宇宙・神」の形而上学の三大問題とはやっぱりちょっと位相がちがうんです。
ちょっと整理してみましょう。
まず『純粋理性批判』の中で、カントは人間の理性(推理の能力)には限界があることを証明します。
人間は実際に経験し得ないものごとに関しては、認識することはできない。
けれども人間には理性が備わっているため、実際には経験したことがないことであっても、推論を積み重ねることができてしまうのです。
従来の形而上学の誤りはそこにある。
霊魂の不死、宇宙、神について、推論に推論を重ね、誤った議論に陥ってしまっている。
カントは霊魂の不死に関して、従来の形而上学が陥った誤りを「先験的誤謬推理」と名付けます。
つぎに、宇宙論での誤りを「二律背反」としてとりあげます。
「二律背反」は、理性を誤って使用することで、まったく相反する二個の結論に達してしまう、ということで、以下の四つがあげられます。
第一の二律背反:世界は時間上始めを有し、空間に関しても限界を有する。
←始めを有せず、限界を持たない。
第二の二律背反:世界におけるすべての実体は単純な部分からなる。
←単純なものは存在しない。
第三の二律背反:世界において自然因果律の外に自由な原因が存在する。
←一切は自然因果律によって生起し、自由というものはない。
第四の二律背反:世界にはその部分としてかあるいは原因として絶対的に必然的なものが存在する。
←世界の内にも外にも絶対に必然的なものは世界の原因として存在しない。
最後に、神の存在証明をおこなう上での従来の誤りを指摘し、存在を証明することはできない、とします。
こうしてカントは従来の形而上学を批判しました。
そのうえで、つぎの「実践理性批判」において、形而上学をあらたに人間の側から再構築していくのです。
このとき、まず「自由」の存在は、二律背反でみてきたように証明することはできないけれど、意志の自由は道徳律の存在根拠である、というありかたで見出すことができる、とします。
けれども霊魂の不死と、神の存在は、「実践」という方法においてさえ直接与えられることはありません。
もしかしたら、カントがもっとあとの時代に生まれていたならば、このまま霊魂の不死も神の存在も、人間には知り得ないもの、として放っておいたかもしれません。
けれども、カントはやはり18世紀の人で、おそらくは霊魂の不死と神の存在は絶対的な信仰としてカントの中にあったのでしょう。
そこでカントは「要請」という形で認めることができる、としたのです。
ここでの「要請」ももちろん「公準」という意味なんです。
でもやっぱり…「強く請い求める」という「要請」のもうひとつの意味は響いていますよね。
この回答への補足
ありがとうございました。
本当に毎度毎度ご親切に教えていただき恐縮です…
細かい説明まで本当~に感謝します!!!
ありがたいです。
m(__)m
No.1
- 回答日時:
二点のご質問なんですが、まとめて回答します。
というか、合わせて理解した方がわかりやすいのではないかなー、と思ったもので。
ヨーロッパの中世は、キリスト教の支配力がことのほか強く、目的論的世界観に貫かれていました。
目的論というのは、あらゆるものは神の計画によってさだめられており、神のきめた終末にいたるとする考え方です。
その時代の学問(形而上学)の目的は、ものごとの因果関係の背後に神の存在を認識することで、経験的には知り得ない「神」・「世界」・「霊魂」の三つはきわめて大きな問題として考察されていました。
(「自由」は「神」と人間との係わりから問題にされていました。人間は「神の予定」に強制されずに、自分で意志決定できるのか。それとも神の予定は人間の自由意志を排除するものなのか)。
ところがルネサンス期を経て、次第に人間の価値が中心におかれるようになり、自然を考察する時も神との関係を離れるようになってきます。
この時期の代表的な科学者であるガリレイは「自然という書物は数学的記号で書かれている」として、自然探求の目的はこの書物を解読することであり、そのためには、そこに書かれている記号、すなわち数学が不可欠だと言うようになります。
その流れを受けて17世紀に登場したのが、大陸合理論の祖デカルトです。
デカルトの意図は数学的方法を哲学の中に導入することによって、哲学を確実な学問にしよう、というものでした。
デカルトはまず、唯一の確実な事実「われ思う、ゆえに我あり」を根底に置いて、そこから神を証明します。
そして、神はふたつの実体、心と物体を創造した、と考えます。
さらに物体の本質は延長(空間的ひろがり)であるとし、自然全体は巨大な機械であるととらえました。
自然には宇宙全体を貫く法則があって、その法則に従って動いている。
神は完全であるゆえに、その神から人間に先天的に与えられた理性は宇宙を合理的に解釈できるはずである。
したがって、宇宙の法則は、理性による演繹的な推論によってのみ見出すことができる。
合理論的宇宙観をおおざっぱにまとめてみると、このようなものになるかと思います。
ヨーロッパ大陸の合理論に対して、イギリスでは相対的に別個な思想の潮流があったのですが、18世紀に入るといわゆるイギリス経験論と呼ばれる人々が登場してきます。
この人々の主な主張は、人間は経験を超越したものに関しては認識を持ち得ない、というものでした。
ここにおいて、人間が経験上知り得ない神・世界・霊魂を問題にする形而上学は否定されます。
さて、ここでやっとカントの登場です。
カントはイギリス経験論を踏まえつつ、形而上学を人間の立場からもう一度とらえなおそうとしました。これがカント哲学が目指したものでした。
>これらの要請の理論を述べたきっかけ
きっかけ、というと、カントの個人的な思いを記した資料が残っているわけではないのでむずかしいのですが、カントが目指そうとしたのはそういうことだったんです。
最後に付け足しですが、重要なことを。
【要請】という語を辞書で引くと、ふたつあることに気をつけてください。
広辞苑にはこう記されています。
-------
(1)強く請(こ)いもとめること。必要とすること。
(2)〔哲〕(postulate) 公理のように自明ではないが、証明不可能な命題で、学問上または実践上、原理として承認されているもの。例えばカントは道徳命令を成立させる根拠として、自由、霊魂の不死、神の存在を理論的には証明できない実践理性の要請として認めた。
-------
ここにも例で引かれていますが、カントの「要請」(訳によっては「公準」とも)は(2)の意味です。
長くなってしまって申し訳ないです。もうちょっとすっきり書けないものか、と思うんですが、自分が歴史の流れから理解するやり方が好きなもので、ついこんな書き方になってしまいました。わかりにくかったら補足ください。
この回答への補足
とても詳しくありがとうございました。
非常にわかりやすいです!!
それで申し訳ないですが、ひとつ補足させてください
m(__)m
要請という言葉なんですが
それら3つ(自由、霊魂の不死、神)=要請 ?
それとも要請によってそれら3つの存在を認識したのすか?
要請という言葉とそれらがイコールになるのか、要請が行為なのか… 再度すみませんがお願いします。
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