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 最近、商品名を表すロゴの末尾、右隅に小さく、円(○)の中に文字「C」が入れられたマルシーマークをごくたまになのですが見かけることがあります。これは一体、何を意味する表示なのでしょうか?

(1) マルシーマークと言えば、まず思いつくのが、無方式主義の国の著作物を方式主義の国でも保護するべく、万国著作権条約第3条第1項に基づいて表示するものですが、これには、「マルシーマーク」、「著作権者名」、「最初の発行年」を一体的に表示する必要があります。件の表示は、マルシーマークだけなのです(しかも、著作物ではなく商品名に)。

(2) となると、次に考えられるのは、○の中に文字「R」が入れられた登録商標マークの誤記ですが、件の商品名、商標出願はしているものの、まだ登録されてはいないようです。

(3) 「商品名が特殊なロゴで表されているので、このロゴに著作権を主張したいのかなあ?」とも考えたのですが、「文字の形状は著作物とはならない」という判例が複数あることから、これだとも思えません。

 そうなると、著作権や商標権以外の何かを表すマークとしか考えられないのですが(商品の発売元が(1)、(3)の事実を知らない、という可能性はありますが)、このマークを付けるとどういうメリットがあるのか、ご存じの方おられましたらご教示下さい。

A 回答 (1件)

 真相を知るすべは、当該商品の製造者に問い合わせる以外にはないと考えますが、ご質問を前提とする限りで、私見を申し上げます。



1 著作権に基づく権利主張の予告
 最高裁平成12年9月7日判決判時1730号123頁は、印刷用書体が著作物に該当するためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならない旨判示しています。
 また、学説上、書と同視し得る場合には、書体を著作物と認める余地がある旨説かれています。

 製造者は、当該ロゴの形状がかかる意味での著作物性を有するものと考えて、模倣者に対しては著作権法に基づく権利主張をする旨を予告(ないしは威嚇)することで、競争上優位な地位を維持しようと考えているものと思われます。

 もっとも、kawarivさんがご指摘のとおり、わが国の著作権法は無方式主義を採用しています(ベルヌ条約1条の同盟国内においても同様・同条約5条2項)から、「マルシー」マークを付することは無意味ですし、同盟国以外の万国著作権条約加入国において保護を受けるための要件(同条約3条1項)としては不足していますから、やはり「マルシー」マークを付することは無意味です。
 おそらく、製造者が著作権の保護要件について十分な研究を欠いたとみるのが妥当かと考えます。

2 不正競争防止法に基づく権利主張の予告
 次に、製造者は、当該ロゴが不正競争防止法2条1項1号、2号、2項、商標法2条1項所定の「商品等表示」の一形態たる「商標」にあたるものと考えて、模倣者に対しては不正競争防止法3条(差止請求権)ないし4条(損害賠償)に基づく権利行使をする旨を予告(ないしは威嚇)することで、競争上優位な地位を維持しようと考えているとも思われます。

 もっとも、不正競争防止法上の保護要件は、周知性及び混同誤認行為(同法2条1項1号)ないしは著名性(同項2号)であり、「マルシー」マークを付することは無意味ですから、この観点からみても、製造者が著作権の保護要件について十分な研究を欠いたとみるのが妥当かと考えます。

3 商標権ないしは意匠権の保護要件についての誤解
 さらに、kawarivさんがご指摘のとおり、製造者が、商標権ないしは意匠権が設定の登録により発生する(商標法18条、意匠法20条1項)ことに対する理解を欠き、「『マルシー』マークを付したデザインは法律で保護される」といった誤解に基づいて、「マルシー」マークを付した可能性もあります。
 製造者が、本来、著作権保護の一要件(必要条件)にすぎない「マルシー」マークを、十分条件であると誤解したために、「マルシー」マークが付されたのではないか、というわけです。

4 結論
 いずれにせよ、製造者が知的財産権に対する十分な理解を欠いているのでしょう。
 kawarivさんがすでにご存知と思われることばかりを長々と並べ立てました。お目汚しとなり、申し訳ございません。

この回答への補足

●参考情報

 大半の音楽CDには、マルシーマークの他、○の中に「P」が入れられたマークが付けられています。これをマルピーマークと呼ぶのかどうかは存じませんが、これは「レコード保護条約(正確には、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード制作者の保護に関する条約)」に基づく表示で、「P」は「Phonogram」の頭文字です。
 効果としては、マルシー表示と同じなのですが、何故にこの条約がわざわざ別個に設けられたのかは、私も勉強中です。

 既にご存じかもしれませんが、ご参考までに。

補足日時:2002/04/03 12:28
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この回答へのお礼

 iustinianus さん(としては?)、はじめまして(笑)。以前、このカテゴリで、質問者の方の為に親身になりながらもむやみやたらに同情を寄せることはせず、条文・判例に基づいて懇切丁寧にご回答していらっしゃった方が退会され残念に思っておりましたが、iustinianus さんの頼もしいご活躍を拝読するにつけ、その方が戻ってこられたのかと勘違いするばかりです(^^)。
 コメント欄で「最近は、知的財産法に興味があります」と仰っていたことは存じておりますが、相当勉強されているようですね。このサイトでの知的財産に関するご質問を考察するのもかなり有意義だと思いますので、ぜひトライなさってみて下さい。


 さて、本題です。

 本当は商品名を出せば分かり易いのでしょうけれど、そうすると「あ、これに権利なんてないんだ。良いこと聞いた」とよからぬ勘違いをし、悪さを企む人が出てくる可能性があるので控えます(笑)。その商品は充分著名なので、ロゴは保護されなくても、商品名は不正競争防止法による保護対象になり得るのですけれども。それに、商品名が商標として登録されれば、商標法でも保護されますし。

 そのロゴは、著名なデザイン家に依頼して作成してもらったとのことでしたから、私も、ロゴを保護したいのだろうと推察しました。
しかし、ご教示頂いた最高裁判決-平成10年(受)第332号-(私は、「デザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難である」と判示した平成8年(オ)第1022号:最高裁第一小法廷、平成10年6月25日、は知っておりましたが、この判決は知りませんでした。ご教示に感謝致します)でも指摘されているとおり、書体やロゴが著作物と認められる条件はかなり厳しそうですね。

 とは言え、デザイン家とて自分の創作性を発揮させた上で「誰にも真似のできないロゴ」を完成させているのですから、何らかの形で保護を与えないと報われないような気は確かにします。そうなると、期待されるのが、1973年にウィーンで採択されたタイプフェイス保護協定(正確には、「タイプフェイスの保護及びその国際寄託に関するウィーン協定」……というのが存在するのは知っていますが、詳細な内容までは存じません^^;)なのでしょうけれど、今現在、これは未発効ですし。。。
 まあ、これに関しては、「今後の課題」というところですね(笑)。過度に権利を認めてしまうと、本もおちおち読めなくなってしまいますしね(^^)。

 私の方も、発売元に問い合わせようかなあとは考えたのですが、問い合わせを受けた方にとっては、「するってぇと、おまえさんとこは何かい、著作権として保護されないものに権利を主張しようっていうのかい!?」というように、いちゃもん以外の何者でもないかなあ、という気がしまして(笑)、ためらってしまいました。

 やはり、ご推察頂いた1~3のように考えるのが妥当のようですね。
 有意義なご回答、ありがとうございました。

●蛇足
 私は、自分が疑問に思ったことを質問しておきながら、頂戴したご回答に「そんなことは自分にとって一常識にすぎない。貴殿の回答は、釈迦に説法(おお、今度はちゃんと書けた^^;……実は、かつて「釈迦の耳に念仏」と書いて投稿してしまったことがあるのですよ^^;)」と揶揄するような人間に成り下がりたくはないですよ(笑)。

お礼日時:2002/04/02 13:32

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