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1945年6月22日「義勇兵役法」が公布。翌23日には「国民義勇戦闘隊統率令」が制定され、本土の国民のほとんどが義勇戦闘隊員として軍の統率下に組み入れられました。
つまり、国内法的にみて、8月当時の広島市民のほとんどが戦闘員であったということになるのですが、国際法的に見て広島原爆は無差別爆撃になるのでしょうか。
法的判断を下したものとして「下田判決」があるのですが、広島市民が義勇戦闘隊員であったことについては一切触れられていません。

なお、広島原爆を正当化しようとする意図はありません。

A 回答 (13件中1~10件)

すでにお察しのことと思いますが,広島・長崎へ核兵器使用が使用された時,その合法性あるいは違法性を明確に示し得るような条約法上の規定は存在していませんでした.



ですからこの問題の解決は当時有効だった国際慣習法によるほかありません.No.5さんご指摘のとおり,1945年の時点でハーグ空戦規則22条,24条1-3項が国際慣習法を反映していたかについては大いに疑問が残ります.(ちなみにthisawayさんがNo.9さんへの補足でおっしゃっていた都市に大兵力がある場合ですが,24条4項に限定的な例外規定があります.)

核兵器使用については,害敵手段としての合法性と,兵器そのものとしての合法性とに区別して考えることができます.

一.核兵器使用を害敵手段の見地からのみ考えた場合.仮に広島・長崎市民のほとんどが本当に戦闘員だったとすると,thisawayさんのおっしゃるとおり彼らの殺傷そのものは違法だったとはいえなくなります.戦闘員殺傷と非戦闘員殺傷の均衡(いわゆるproportionality)が欠けていれば,その結果犠牲になった非戦闘員の殺傷については違法性が生じますが,戦闘員の殺傷自体は合法のままです.

私は件の"国民義勇戦闘隊"が当時の国内法上どのような性格なものだったのかよく知りません.しかし,当時の国際慣習法(1907年ハーグ陸戦規則1条に反映されていました)を見ると,単に政令その他によって軍の統制下におかれ義勇戦闘隊と名乗っただけでその隊員が戦闘員とみなされた訳ではなかったことが分かります.当時,正規軍以外の組織を構成する人員が国際法のいう戦闘員となるためには,責任ある指揮官の命令に服すること,遠方からでも識別可能な標識を着用すること,また武器を公然と携行することなどの実態が必要だったのです.国民,とくに広島・長崎市民のほとんどが義勇戦闘隊員であったとしても,彼らに戦闘員としての実態がなかったのであれば国際法上非戦闘員だったとしても問題ないと思います.こうした前提に立てば,広島・長崎への核兵器使用によってもたらされた非戦闘員の犠牲は均衡を著しく欠いていたといえるでしょう.

第二次世界大戦当時,非戦闘員を対象とした復仇行為は違法ではありませんでした.(実は現在でも,少なくとも慣習法上は,このような行為は違法とは言い切れません.)ただ,広島・長崎の例を見る限り,仮にアメリカが復仇行為と主張したとしても,事前警告がなかったこと,(上記のように)均衡を著しく欠いていたことなどを考えると復仇行為として成立し得なかったことは明らかです.

二.核兵器を兵器そのものとしてみた場合.伝統的に,兵器禁止・規制に関する国際法はそれぞれの兵器あるいは兵器の種類ごとに多国間条約を締結する形をとってきました(もちろん,なかには後に慣習法にその内容が反映されていった条約も多々ありますが).この点で,核兵器使用禁止を規定した普遍的多国間条約が未だ締結されていないことは注目に値します.

やはり鍵となるのは国際慣習法,とくに戦争法の諸原則です.国際法の一般原則のひとつに,条約で明らかに禁止されていないことは原則的に適法であるというものがあります.ところが戦争法には19世紀末以来マルテンス条項(Martens Clause)とよばれるものが存在し,これによればそうした適法の推定は人道原則やその時々の国際慣習法に優越するものではないとされています.しかも,戦争法の諸原則は特定の兵器のみに適用される(あるいはされない)ということがありません.

空戦における無差別爆撃禁止は,海戦・陸戦における無差別砲撃禁止と陸戦における無差別攻撃禁止に対応しています.これらの禁止の背景には軍事目標主義があります.さらに軍事目標主義は目標選別の原則(いわゆるprinciple of distinction)に端を発しています.この原則は戦争当事者に対し,攻撃の対象としての軍事目標(military objectives)とそうでない文民・文民財(civilians and civilian objects)とを識別する能力を常に保つことを要求します.もう一つ重要な戦争法の原則は,敵兵を無力化する際,過剰な危害や不必要な苦痛(superfluous injury and unnecessary suffering)を与えてはならないというものです.

もともと生物化学兵器の使用が禁止されたのは,細菌や有毒ガスは目標を選別して軍事目標のみを攻撃ことができず,かつ攻撃対象に与える危害や苦痛を必要最小限に留める能力が本質的に欠けているとされたためです.目標選別と過剰加害行為禁止の原則は第二次世界大戦当時すでに成立していました.広島・長崎で使用された核兵器は目標選別能力も,熱化学反応による破壊力や放射能による殺傷能力を制御する能力もありませんでした.したがって,広島・長崎での核兵器使用は違法であったと結論付けられると思います.

この結論は国際司法裁判所が1996年に示した核兵器の威嚇・使用の合法性に関する勧告的意見にも合致しています.この意見の中で,裁判所は目標選別と過剰加害行為禁止の原則が兵器一般に適用され(78段落),核兵器には適用されないとする学説はごく限られた少数派であり(85-86段落),そしてこれらの原則は核兵器が初めて開発されたときすでに存在していた(86段落)と説明しています.

したがって,広島・長崎における核兵器使用は,当時の国際法に反していたといえると思います.それは二つの理由によります.まず害敵行為として考えた場合,戦闘員の殺傷と非戦闘員の殺傷の均衡が著しく欠けていたということ.さらに,兵器そのものとして考えた場合,目標選別不能・殺傷力制御不能であったため,攻撃対象を軍事目的に限りかつダメージを必要最小限に抑える能力がなかったということです.

ご参考までに,ハーグ空戦規則22条と24条1-4項は次のとおりです.(あいにく和訳は持ち合わせておりません):

Rules of air warfare (drafted by a commission of jurists at The Hague, December 1922-February 1923)
...
Article 22
Aerial bombardment for the purpose of terrorizing the civilian population, of destroying or damaging private property not of military character, or of injuring non-combatants is prohibited.
...
Article 24
(1) Aerial bombardment is legitimate only when directed at a military objective, that is to say, an object of which the destruction or injury would constitute a distinct military advantage to the belligerent.
(2) Such bombardment is legitimate only when directed exclusively at the following objectives: military forces; military works; military establishments or depots; factories constituting important and well-known centres engaged in the manufacture of arms, ammunition or distinctively military supplies; lines of communication or transportation used for military purposes.
(3) The bombardment of cities, towns, villages, dwellings or buildings not in the immediate neighbourhood of the operations of land forces is prohibited. In cases where the objectives specified in paragraph (2) are so situated, that they cannot be bombarded without the indiscriminate bombardment of the civilian population, the aircraft must abstain from bombardment.
(4) In the immediate neighbourhood of the operations of land forces, the bombardment of cities, towns, villages, dwellings or buildings is legitimate provided that there exists a reasonable presumption that the military concentration is sufficiently important to justify such bombardment, having regard to the danger thus caused to the civilian population.
...
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義勇兵役法は公布されただけで、施行はされませんでした。



戦時国際法には、軍事目標主義という考え方があります。文民を目標にすることは違法ですが、軍事目標を狙って、その影響で文民に被害が及ぶことは合法です。したがって原爆投下は正当な軍事行動です。
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この回答へのお礼

この場をお借りしまして、ご回答を頂いた全ての皆様にお礼を申し上げます。
非常に有意義な回答を数多く頂いて、非常に感謝しております。
ありがとうございました。

お礼日時:2005/08/10 18:33

ハーグ空戦規則案(空戦に関する規則)は、下記参考URLにあります。


補足で触れられている兵力の集中地域については、24条4項のことだと思いますが、これには陸上作戦の直近地域であることという条件がついています。

参考URL:http://www1.umn.edu/humanrts/japanese/J1923a.htm
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補足が無視できませんので申し上げます。


便衣隊は、最初から軍服を着ずにゲリラ攻撃を仕掛ける意図を持って作られており、スパイとして位置づけられます。義勇戦闘隊(なるものは実質的にありません。法律を作っただけです。市民は普通に生活していましたし、女子高生や中学生は徴用で奉仕していました)とは、根本的に違います。
女性や子供を含めた全ての敵国人が戦闘員だは、さすがにアメリカも公言してはおらず、都市部の小さな工場も軍需工場だ…などと主張して、東京など都市の無差別爆撃を行い、原爆もその延長線上にあります。
米英は、ドイツでも恐ろしい殺戮空爆を行っており、国際法上も、全く言い逃れ出来ない蛮行だといえます。
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戦争に正しい事は全く存在しません。



一応、戦闘員以外への攻撃の禁止などはジュネーブ条約で捕虜の待遇で規定されています。

これによりますと、火炎放射器の使用や非戦闘員虐殺も問題になってきます。
人間はゴミではありません。

もちろん、条約にサインしていない国もあるようです。

これを公認してしまえば、南京は正しいと言ってしまう事になります。

負けたから南京が問題になったので、実際は条約を無視した行為は問題視すべきです。

ベトナム帰還兵は、未だに後遺症を引きずっています。これが正しい人間の姿で、他の人間は自分の狂気に気が付いていないのでしょう。

いつ頃善悪の判断も付かない自分に気付くのでしょうね。。

この回答への補足

皆様、御回答ありがとうございました。
どうも、質問の意図がうまく伝わらなかったようなのでこの場を借りて補足いたします。
(うまく伝わった方もいらっしゃいますが。)

当時の国際法と照らし合わせた場合に、無差別爆撃になるかならないかを教えていただきたいと思いますので、
「この協定のこの条文にこう書いてあるため、無差別爆撃といえる。」
と回答していただけると非常にありがたく思います。

ANo.5様が回答されておられるように「ハーグ空戦規則」に無差別爆撃に関する条文があり、非戦闘員を巻き込む爆撃は禁止されているようなのですが、この条文にはただし書きがあって、都市に大兵力がある場合は非戦闘員を巻き込んでもやむをえない、とされているらしい、というところまで情報を掴んだのですが、肝心の条文(原文)を見つけることが出来ません。
国民義勇戦闘隊は人数的に大兵力になるのではないかと考えています。

以下蛇足(無視してください)
なんとなく南京大虐殺論争の便衣兵と国民義勇戦闘員は共通点があるように思っています。南京論争では、国際法的に便衣兵は殺しても良いのだ、ということになっていますが、とすると、国民義勇戦闘員が殺されても文句は言えないのではないかなどと考えています。

補足日時:2005/08/09 19:34
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兵器として戦闘員と市民を区別して攻撃する能力がない以上、戦闘員と市民が混在する都市を爆撃することは無差別爆撃と言うべきでしょう。


また、戦時末期ですから、市民のうち、兵士に適さない
15歳未満や60歳以上の文民の割合は相当程度高かったのではないかとも考えられますので「ほとんどが戦闘員」というのは言いすぎではないかと思います。

もとより人体実験的価値を有する爆撃ですので、標的は何べん無く存在する方が良いと判断された可能性さえあります。
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・アメリカは広島に原爆を落とすことを決めた。


・アメリカは東京を空爆することを決めた。

どちらも人を大量に殺すためですので、差別無差別はありません。それが戦争というものです。殺し合いです。自分の家族を守るためにあいての家族を全員殺さねばならないとしたら殺す。それが戦争じゃないですか。判決がどうとかそんなものは後から出たものであまり意味はない。正しいものが勝つのではなく勝ったものが正しくなるものです。戦争は始めたこと自体が両国の罪です。
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確か、広島のあの場所に投下する予定ではなかったと思います。


天候の関係で流されて、あの場所に着弾したと思うのですが。
ただ、京都や奈良は文化的な遺産があるので意図的に避けたとききます。
ですので無差別ではないともいえますが、広島義勇戦闘隊員をピンポイントで狙ったともいえないのでは。
しかし、政略的に効果があるところという考えもあったとは思います。しかしながら、この作戦の延長上に、日本が降伏して後の対処の仕方なども吟味されていることから考えると、日本を壊滅させようという目的ではなく、再生も考えていたみたいですし、そのことから考えると、壊滅につながるような都市も避けたようです。
以上のことから、どちらかといえば、消去法で選ばれたのではないでしょうか?
そういう意味では差別することなく選んだということで、無差別ということなるのでは?
難しい問題で、あまり参考にならないかもしれませんが。
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陸上部隊の作成行動の直近ではない場合、軍事目標であったとしても、文民への犠牲は避けるべき義務があると考えられていました(ハーグ空戦規則案第24条第3項)。



広島市民の全員が義勇戦闘隊員であったわけではなく、年少の者、高齢者は、明らかに文民としての資格を有していましたから、仮に義勇戦闘隊がハーグ法上「軍隊」と考えられ、隊員は無条件に交戦者資格を有するとしても、国際法的には違法な無差別爆撃であったということは可能だと思います。

もちろん、ハーグ空戦規則案は未発効でしたから、軍事目標主義が慣習法化していたとしても、そこまで細かい点については十分慣習法化していたとは言えない、という主張もできるとは思います。
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どうみても無差別爆撃だと思いますよ。


基本的には戦争中で「軍人と民間人を区別して攻撃」なんかできないと思いますよ。
イラク戦争にしてもアフガニスタンにしてもあとベトナムにしても「軍人と民間人を区別して攻撃」したような事を軍や報道は言っていますが、現実的にかなり難しい事だと思います。
まぁ戦争は「殺し」や「破壊」ですから「法」や「人道」で論じてもあまり意味があるようには思えません。
必要な事は戦争でなくなった方の「思い」(たぶん当時の日本人の共通の「思い」があったと思います)を日本人がいつまでも忘れないことではないでしょうか。
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